【書評】『食大乱の時代』
(大野 和興)

発行:七つ森書館
本体価格1890円(税込)
食の根っこで何が起こっているか
中国からのギョーザに農薬が入っていたと大騒ぎしていたら、そこに食料危機なるものが津波のようにおしよせてきて、世界中を飲み込んだ。せきたてられるように、本書の執筆を急いだ。長年農と食をめぐる問題を見つづけ、現場で当事者の方々と動いてきたものとして、わたしたちはいま表面にあらわれているあれこれの根っこで何が起こっているのか、それはどういう意味を持っているのかを明らかにしたいと考えた。
「食べる」ことは、農という自然と人間が織りなす営みによってつくられた「食材」のなかに宿る「生命」を、「料理」するという行為を通して引き出し、それを「食べる」ことでわたしたち自身の「生命」を再生産することだと思う。この「生命の循環」「生命の再生産」の根っこにまでさかのぼって、いま起こっていることの意味をとらえてみたいと思ったのだ。
この野心的な試みが成功したという自信はないが、とりあえず食の根っ子の現実をとらえ、そこで人々がどう生き、あるいはどう生きようとしているかについては、お伝えすることが出来たと思う。
そのなかで気付いたのは、食の根っこをとらえるというのは、世界を丸ごととらえることだなあということだ。
背後に増殖し連鎖する貧困
人も社会も壊れてしまったなあ、と思いたくなるような出来事が続いている。高齢者も働き盛りの壮年も若者も、仕事を取り上げられ、賃金は下がる一方。海外から安い農産物が入り、田んぼや畑で働く人が食べられなくなる。地域の経済力が衰え、商店街が消えていく。社会保障や医療に金をかけるのは無駄だからと、予算が次々と削られ、社会を支える仕組みが空洞化する。
これら、目の前で起こっているもろもろをたどっていくと、いま地球上をくまなく覆っている異常な競争社会に行きつく。追いこせ、勝ちぬけ、そのために効率をあげろ、効率のために犠牲が出るのはやむをえないじゃないか。これをグローバリゼーションという。力のあるものがますます肥え太り、本来その地域に住む人々のものであった自然環境も地域資源も文化も、肥え太った強者に吸い上げられて、貧困と飢餓が世界を覆う。
田んぼや畑、食の加工や調理の場、食卓、それぞれの現場で働く、あるいは食べる人を訪ねるなかで、わたしたちは、いま食の世界で起こっていることの背後に、増殖し連鎖する貧困があることに突き当たった。とすれば、その貧困の連鎖を断ち切ることなしに、わたしたちは「生命の再生産」としての食を取り戻すことは出来ない。
誰にも生きる権利があること、生きる権利を求めて世界中の人びとがたたかっていること、足元では「くらし」を自分たちでつくりなおす実践が、これまた世界中で始まっていること、食の現実を描くことを通して、そんなことがお伝えできたとすればとてもうれしい。

