JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

【書評】岩波ブックレット『生命と食』

(渡部 朝香)

生命と食

福岡伸一著
発行:岩波書店
本体価格504円(税込)

体−食べもの−環境
 『生命と食』は、今年3月2日、東京で開催された第36回日本有機農業研究会全国大会での福岡伸一先生の記念講演をもとにした一冊です。
 とはいえ、大会で語られなかったトピックも多々加筆していただきましたので、講演とは一味違う、福岡先生の食をめぐる思考のエッセンスが凝縮された本になったと自負しています。
 食べものは単にエネルギーとして消費され、排泄されるのではなく、体のすべての分子と絶え間なく入れ替わり、体を構成し、やがて流れていく。福岡先生が提示する生命観、「動的平衡」は、私たち人間だけではなく、もとは生物である食へものの成り立ち、そして環境全体へと敷衍されます。
 本書を通して語られる、「プロセスの見える食を選ぶべき生物学的根拠」は、あらためて有機農業の意義を裏付けるものとも言えるでしょう。

消費者こそ変わらなくては
 講演は生産者の皆さんに向けられたものでしたが、この本を作り上げていくにあたって心がけたことは、「消費者に伝える」ということでした。消費者一人ひとりが、食について根底から考え、消費行動や食生活を見直すきっかけになってほしい、そう願いながら、先生と相談を重ねました。
 たとえば、安全性に配慮して生産された牛乳があり、それが普通の牛乳より50円高かったとして、はたしてその50円は払えないものなのだろうか。携帯やブランド物のバッグにお金をかけながら、食品の50円を惜しむ金銭感覚は、おかしくないだろうか。このような問いかけなども、先生が新たに書き加えてくださったところです。偽装が多発するような現在の食の生産構造は、より安いものへ向かう消費行動にも責任があるのだということ、消費者が変わることの重要性が、福岡先生ならではの視点でメッセージされています。

有機農産物生産者を励ます内容
 安全性に留意して作られたものを買って生産者を支えることの意味、人工的な分子が生物に負担をかけることの科学的説明など、本書には、有機農産物を生産する皆さんへのエールとなる話が、たくさん盛り込まれています。
 コンパクトでお買い求めやすいものですので、勉強会、ちょっとした贈り物など、いろいろな形でご利用いただければ幸いです。

※第36回全国大会での福岡伸一さんの記念講演の記録は、本08年6月号と7月号に2回に分けて掲載しました。

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