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『バイオ燃料 畑でつくるエネルギー』

天笠啓祐著
発行 コモンズ
価格 1600円+税
 

 地球温暖化(気候変動)への対応として、いわゆる低炭素型社会(CO2排出削減)への転換が迫られている。しかし、私の悲観的予感では人類は大きな二つの罠にはまりかけているかにみえる。すなわち、バイオ燃料と原子力への依存である。抜本的な産業構造の変革や生活様式の根本的見直しを後回しにして、いわば現状の取り繕い策として、バイオ燃料と原子力を押し出す事態が起き始めている。本書は、二つの罠のうちの前者の問題点について克明に分析し批判した警告の書である。
 私達の日常生活においても、世界的なバイオ燃料ブームのあおりを受けて穀物価格の高騰が続いているが、もっと深刻な事態へと私達を導いていく様子が明らかにされている。すなわち、「・・・エネルギー戦略の中心に位置づけられ、規模が拡大し、市場経済にさらされることで、バイオ燃料の性格は一変していく。
 トウモロコシを中心に食料・飼料・燃料の奪い合いが起き、発展途上国の食料を先進国のエネルギーが奪いつつある。新たな農地の開拓のために熱帯林の伐採が進み、地下水は過剰に汲み上げられた。加えて、遺伝子組み換え作物の栽培面積が拡大し、花粉や種子による生態系や食料の汚染が起き、多国籍企業による種子支配がさらに強まっている」(P.172)わけであるが、これは米国の食糧・エネルギー戦略の中で以前から周到に準備されていた事態であることが詳細に描き出されている。
 前半の章では、実用化されているバイオ燃料の二つの柱であるバイオエタノールとバイオディーゼルについて、米国の戦略や欧州の独自路線、さらにブラジルの動きや途上国で繰り広げられている現状等が紹介されている。続いて、その背景としての私たちの大量消費社会の構造的問題、それを支えている巨大多国籍企業の動向、そして食糧でなく木質などセルロース系原料への移行を目指す第二世代バイオ燃料の現状と問題点が明らかにされていく。
 そこでの根源的な問いかけは、「バイオ燃料は環境にやさしいのか」(第7章)であり、見せかけの実体が暴露される。環境に優しいどころか深刻な事態が、「北のバイオ燃料が南の食料を奪う」(第8章)、「遺伝子組み換え技術による作物・微生物・樹木の開発」(第9章)において警告されている。そして最終章では「小規模な自然エネルギーを基調とした社会をつくる」として、著者なりの展望と期待が示されている。
 日本では、”ブームに乗り遅れるな”といったバイオ燃料をめぐる浮ついた政策が進行しているが、実状と背景について明解かつ辛口に批判的検証を試みた本書の提起は傾聴に値する。食とエネルギーの未来を考えるための必読の一冊である。

(古沢 広祐)

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