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『アース・デモクラシー』

ヴァンダナ・シヴァ著
山本規雄訳
発行 明石書店
価格 3150円(税込)
 

 本書の著者ヴァンダナ・シヴァは、環境問題や農業問題を中心にさまざまな分野で活躍しているインドの市民運動家、思想家です。彼女の本は日本でもたくさん翻訳されています(本書が8冊目)。
 また、世界社会フォーラムなどの国際的な舞台で、多国籍企業と資本主義大国を、歯に衣着せずに鋭く批判していることでもよく知られています。
 シヴァがこれまで訴えてきたことは、たとえば次のようなことでした。バイオテクノロジーや遺伝子工学の進展によってモノカルチャー(単一種大規模生産)を押しつけられてきた結果、多様で豊かな伝統的農業と食の安全がどれほど破壊されてきたか。あるいは、超国家企業によって世界中の水資源が私有化・民営化されるせいで、貧困層がいかに生命の源である水を奪われているか。
 またアメリカ、EU、日本が推進する特許の国際制度のもとで、多国籍種子企業が各地の在来品種の特許を取得し、そのためにどれほど多くの小規模農家が窮地に追いこまれているか…。
 こうしたシヴァの取り組みに共通している問題意識は、企業グローバリゼーションによって自由主義市場がこのまま際限なく拡大されていき、農業を含む多様な経済、多様な文化が世界中で画一化され、破壊されてしまったなら、人間だけでなく地球全体が滅びてしまうということです。なぜなら、それぞれの土地に根ざした多様な経済や文化は、本来その土地の環境によく適応し、持続可能なものであったからです。シヴァはみずからの主張の実践として、インドで8ヘクタールの有機農場と種子バンクを運営してもいます。
 しかしシヴァは、資本主義をローカルな価値で乗り越えようとする運動は、視野の狭いナショナリズムに陥りがちだと警告します。それは昨今の宗教的原理主義の興隆を見てもあきらかです。だから彼女は、生命こそを価値観の中心とすることが必要なのだと説いているのです。まさにこれが、本書でシヴァが「アース・デモクラシー」という言葉で表現する理念にほかなりません。ローカルなものに依拠しながら、生命の普遍性をとおして絶えずグローバルな地球環境を意識すること、これこそが希望の道なのです。
 本書はシヴァ思想の集大成であり入門書であると言えます。始めてシヴァに接する読者でも最後まで読み通すことができるように、できるだけわかりやすく、注もたくさん付けるように心がけました。多くの人に手に取っていただければと願っています。

(山本 規雄)

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