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『農協に明日はあるか』

先﨑千尋著
発行 日本経済評論社
定価 1900円+消費税
 

 農業を守るのは「農協」以外にないという想い

 本書の著者は、本会の幹事であり、茨城県ひたちなか農協の代表理事専務で活躍されている先﨑千尋氏である。『土と健康』の06年10月号でも論陣をはられている。先﨑氏とは、たしか永明農協に勤務されていた頃からであるから、随分長い交友で、農協や農業など楽しく交論し、その関係は現在にいたっている。
 さて、本書のタイトルは農協の存否を問うショッキングなものであるが、その裏には「農業」に明日はあるかという想いがある。これを現役の代表権を持つ農協の常勤理事の立場で世に問う大胆さに敬意に表したい。
 しかし経歴が示すように、単なる論客ではない。全国連、単協職員、町会議員、町長など現場での活動、実践を重ねてきたからこそ痛感する危機感から、止むに止まれぬ今回の出版になったものであろう。
 15年前の著書『よみがえれ農協』(全国協同出版)に次ぐ久々の出版である。当時に比べると農業も農協も向上どころか、断末魔の最悪の状況になっている。農民は激減、後継者は無く、耕地は荒地と化し、農産物は値下がりを続けて、ついに米価などは生産費の70%となり、借金生産を続ける惨憺たる状況で、いかに規模を拡大しても、この穴埋めなど不可能である。
 その後始末を担わざるを得ない農協は不良債権を抱え、それは広域農協合併でも補えるものではない。こんな状況になって、組合員は、農協は農を守り、組合員を守る組織と認識していたのに、裏切られたと感じ、農協に見切りをつけ、脱退するか、名目のみの組合員化し、農協存立の基礎を危ういものにしている。
 先﨑氏は公人としての激務をこなしながら農政、農業、農協、系統組織、社会問題など広範な分野にわたり投稿し、警鐘をならしてこられた。本書は、『全酪新報』紙に連載された記事を柱に編集され、核心をついた読みごたえのある内容となっている。
 本書では、第一章で、とかく現場から遠く離れる全国連と全国農協中央会に、その主催する全国農協大会に焦点をあてながら、迷い行く農協運動に鋭いメスをあて、改めて設立当時と環境の異なる現在の農協運動のあり方に切り込んでいく。第二章では、農業、農協の四面楚歌の環境の中で、先駆的な取り組みをしているモデル的農協を紹介し、希望の灯に期待を込める。
 第三章では、風前の灯火状態を知ってか知らずか、マスコミ、経済化、はては生活協同組合まで、日毎に強烈になる日本農業、農協批判の論調は、農業、農協の滅亡を速め、そしてそれで進めていく農政を抉りだす。
 自然や農業の本質、実態に無知な人々の頭脳内農業と生きた人間の農業は違う。実際の農業は、シャクシ定規でできるものではないことを啓発するのも、農協の役目であることを力説する。
 弱肉強食、自由競争、市場原理の犠牲は農業に、農村に、農協に、怒涛の如く押し寄せる時代であればこそ、唯一の防波堤になり得るのは農協以外にないと、その思いのたけを、そして関係者に熱いエールを送る本書は、都市の方々にも是非一読を薦めたい。

(佐藤 喜作)

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