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表紙写真


『野菜の時代』

瀬戸山玄著
発行 NHK出版
定価 1700円+税
 

 大平博四さんの畑に魅せられて

 世田谷区の、住宅地に囲まれた畑。持ち主はこの地で四百年続く農家で有機農業のパイオニア、本研究会でも長らく活躍してきた大平博四さん。この畑に魅せられた著者は大平家のすぐそばに居を移し、数年にわたり援農しながら記録をとってきた。この農園をとりまく人々にスポットを当て、大平夫妻を中心に編まれるネットワークの連なりを描いている。人を描くことで、現代社会の食や農にまつわる諸事情と問題の広がりを提示しようという趣向だ。
 登場するのは、篤農家で知られた先代の当主、野菜購入団体「若葉会」会員、研修生、お茶やリンゴを育てる若葉会の提携生産者、お医者さん、子どもたちを農園見学に連れ出す小学校教員、ハチ飼い、映画人、レストラン経営者、養鶏家など。それぞれの時代背景のもと、志と熱意で自分の世界を開こうとしてきた人たちばかり。
 ドキュメンタリストという肩書きをもつ著者らしく、ミツバチの蜜集め、不老食のための調理器、農機具事情をはじめ、何ごとも映像的にとらえては職人風に描く。そのディテールがおもしろい。また文学的な挿話や、「煎茶は味覚のリセット装置」のような新鮮な言いまわしは読んでいて楽しい。巻末には舞台裏を実況中継するような1年分の詳細な「等々力半農日記」も。
 都会暮らしの消費者にも農業にたずさわる人にもオススメ。装丁と写真が美しい。情報の多さと力の入った文体に、読み手は体力を必要とされる、かな?!

(藤田 妙子)

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