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『「耕す教育」の時代〜大地と心を耕す人びと〜』

星 寛治 著
発行  清流出版
定価 1680円(税込)

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「イラストは本書の挿し絵です。クリックすると拡大します。」

 教育の原点を考える手がかり

 あるテレビ番組で、料理研究家の辰巳芳子さんがご自分の畑の世話をなさる様子が映っていました。 「畑仕事のコツはどなたに教わったんですか?」と尋ねるインタビュアーに、八〇歳を超える辰巳さんの目 がキラッと光りました。
 「あなたねえ、何でも人に教わるもんじゃないのよ。”現象”に教わるんです!」
   *   *   *
 ここでご紹介する、星寛治さんの新刊『「耕す教育」の時代』でも、「教える、教わるってどういうこと?」 という教育の原点を考える手がかりに数多く出会えます。
 「…(略)…前近代の社会において、親たちがどういう仕方で子育てをしたのかを、はるかに思いはせることで、 現代の矛盾と荒廃を乗り越えるヒントをつかめそうな気がする。
 それは、おそらく言葉や文字に頼るよりも、大人たち自身の生き様を、いわば体験と事実の重みを通して、 導き育てるあり方ではなかったろうか。」(62ページから引用)
 生きる力を養うことが教育ならば、“なるべく土から離れる人間”を育てようとしてきた近代教育は、 最初から矛盾を抱えていたのでしょう。人は本来、土と太陽と水と空気なしには生きられないのですから。
 もちろん近代になって、ようやく文字が幅広い層に行き渡ったという素晴らしい面は否定できません。 「人はパンのみに生くるにあらず」でもあり、精神的な拠り所が人を強く生かしてくれます。
 それでも、長い人類の歴史から見ると、近代教育は、知識に傾き過ぎた異質なもののようで、これから本筋の 「耕す教育」を新たな形で創造できるのではという希望が見えてきます。

 「もの言う農民」の言葉は力強い

 本書では、高畠の小中学校での環境教育や農業の実践も紹介されます。また、宮沢賢治と真壁仁についての考察もなされています。
 土、生き物、加えて言葉の海。宮沢賢治の豊潤な世界が築かれます。まさに現象から学び、言葉で考え伝える「文化/耕すこと」を改めて想います。
 その系列にある星寛治さん、本書にも名前の出る佐藤籐三郎さんなど、今を生きる「もの言う農民」の、実感に裏打ちされた言葉の力強さにも圧倒されます。
   *   *   *
 私は、一九九二年、山形県高畠共生塾主催「第一回まほろばの里農学校」に参加しました。共生塾の方々は、 皆とてつもなく陽気で、「真面目過ぎて暗い雰囲気かも」という先入観は見事に吹き飛びました。 多様な個性の人たちがのびのび議論し、”勝手に”活躍している懐の深さに感激したものです。
 その折に描いたスケッチを元に、星さんのご著書『農業新時代』の挿し絵を描かせていただき、以来たびたび高畠を訪ねました。
 今回、本書の挿し絵のために久々に高畠でスケッチし、「あれ?星さんちの木、ブナだっけ?」など新鮮な感動ばかり。
 14年目にしてはじめて対峙したブナの葉ずれの豪奢な音、りんごの袋掛けに大忙しの星さんご夫婦の絶妙のやりとり、 小学校や町の施設に関わる方々の熱意とユーモア……。また混沌とした大きなものをいただいて帰途についたのでした。

(イラストレーター&ライター高田美果)

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