出版・販売 コモンズ
定価 2800円+税
農業技術の具体例や動向も紹介
農業技術の具体例や動向も紹介
2000年代以降、世界は有機農業をめぐって新たな時代状況にはいりつつある。すでにEUでは有機農業促進を含んだ環境支払いが普及・定着し(農業環境政策の拡大)、お隣の韓国でも親環境農業育成法の下に直接支払い制度が効果をあげ始めている。
腰の重い日本も遅ればせながら、やっと政府は次年度から環境支払い制度が何とか動き出す方針を固めた。日本における有機農業をめぐる政府の姿勢や動向は、遅いばかりか世界的な視野を欠き、有機農業の捉え方や幅広く育成していくための視点が驚くほど欠如している。
端的に言えば、日本における有機農業をめぐる法制度は、JAS法に基づく有機農産物の認証・表示制度が先行した結果、たんに国家管理の商品規格の一つに矮小化されてしまった。広く21世紀の農業として、世界的に展開しつつある有機農業を日本において拡大・促進していくためにはどんな法制度が必要なのか。その問いに対し、本書の第一部では学会の英知を尽くして答えようとしている。
本書の第一部「有機農業の法制化を問う」は、冒頭に概説した今日的な課題について真正面から取り組んだ内容となっている。具体的には、現状に対する批判的分析とともに、EUや自治体の先進的取り組みを紹介しつつ、学会の専門家を結集して、あるべき有機農業促進法案を提示している。第二部「環境汚染と環境創造」、第三部「有機農業を研究する」では、農薬による健康被害の最新の実態、環境を守り育てる農業技術の具体例や動向などについて、最先端の研究成果が紹介されている。
以下、具体的な内容がわかるように、本書の目次立てを紹介しておこう。有機農業関係者のみならず関心を抱いている方々には必読の書と言ってよかろう。
<目次>
T 有機農業の法制化を問う
第1章 有機農業法制論の転換を―表示規制から農業ビジョン論へ―
第2章 日本の農業環境政策のあり方―EUとの比較をとおして―
第3章 日本における有機農業政策と法制度のあり方
第4章 有機農業推進政策導入の可否をめぐる経済学的考察
第5章 EUの農業環境政策と有機農業振興―フランスにおける展開を中心に―
第6章 滋賀県における環境こだわり農業の推進
第7章 北海道におけるクリーン農業と有機農業の推進
U 環境汚染・破壊と環境創造
第1章 アセチルコリン神経伝達系に作用する農業の長期・低用量暴露による健康被害の実態と対策の課題
第2章 水田生態工学における有機農業の意味
第3章 生物の多様性と自然の循環機能を活用した環境創造型有機稲作
第4章 農業政策に新しい政策スタイルを取り入れる―環境支払いの思想を掘り下げながら―
V 有機農業を研究する
・合鴨水稲同時作における0日齢ヒナ放飼の可能性
・不耕起・ライ麦被覆処理による大型土壌物群集の変化とそれに伴う土壌理化学性と畑作物収量の改善
・作付類型別にみた有機栽培土壌化学性の特徴―健全な土壌化学生をめざして―
・生物多様性保全的農業の技術とそれを支える農家の意識に関する一考察―福岡県糸島地域における環境稲作を事例に―
・有機農業経営論における提携活動分析の位置―農業経営学視点から見た論点整理―
・<研究動向>自然科学分野を中心に
(古沢 広祐)