
発行 家の光協会
定価 1500円+税
小さな財布のおはなし
ついぞ振り返ることもなく、日常に埋没し、自給的な暮らしが特別なことではなく、ごく普通の当たり前のことのように思っていたが、家の光協会から、このような本を書いてみたらと提案いただき、あらためて自給の系譜をひも解いていくうちに、食べものの自給ということは、ただ「自分たちで作って自分たちで食べる」ということ以上の内容を含んでいることに気がついたのです。
野菜や穀物に豊富に囲まれ、食べきれない野菜などのやり取りにはじまって、仲間や地域の人たちとの交流が生まれ、食品加工技術や情報をもいただいてしまえるという暖かいまなざしと人情に溢れた「いただきもの」にいつしかしっかりと囲まれていたのでした。
いろいろなものを作っているうちに、食べる楽しみと同じくらいに、作る過程を面白く感じるようになりました。
本も読みます、インターネット検索もします、だが妻の英子さんが、友人知人などナマの人間関係から教えてもらえる情報は、それらとは比べものにならないほど有効なのでした。
自給生活は「ゆっくり」した暮らし方でもあるのです。「餓えている人には魚を与えるよりも釣り竿を与えよ」という話を聞いたことがありますが、わたしたちの暮らしも基本的には、お金をもって食べたくなったものを買いに行くのではなくて、タネを買いに行くようなものなのです。
だが、「ゆっくり」はタネからだけではないのです。豆腐を作るとしたら作るための道具が必要です。買えばわずか100円か150円の豆腐なのに、数千円もの道具を買い込んだりするのです。作るための労働時間もかかります。お金に換算したら、財布をもってスーパーから買ってくるのとはケタ違いに高いものにつきます。その上、手づくりですから、失敗して食べられない場合すらあります。だから自給は非常に贅沢でもあるのです。
わが家にはこうして手づくりのために買った道具がいろいろありますが、合計金額はそんなに高くはないのです。「これだけ多種類の自給の食べものを作るのはたいへんでしょう」などと言われることがありますが、手づくりを楽しみながら暮らしてきましたので、「たいへん」などということはまったくありませんでした。
こんな暮らしのことをわが家では『小さな財布での暮らし」と呼んでいます。わが家は小さな農業で、稼ぎが多くありませんので、できるだけお金がかからない暮らしを心がけているのです。だから財布は小さいのです。
レシピもたくさんで、読むだけでも楽しくなる本です。きっとみなさんのお役に立つ本だと思います。
(今関 知良)
ホームページ「てんとうむしの背に乗って」
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