暮らしのなかの食と農 19〜21
『有機農業と米づくり』
稲葉光國 著
『有機農業と野菜づくり』
佐倉朗夫 著
『有機農業と畜産』
大山利男 著
筑波書房 刊
米、野菜、畜産と続く有機農業三部作が刊行された。部門ごとになっていることで、有機農業の思想性や運動論というよりも、具体的な栽培技術や経営にウェイトがおかれた書となっている。また、シリーズという側面以外に、各々筆者の個性がでた書に仕上がっているところに注目したい。
まず『有機農業と米づくり』では、「太茎大穂」の栽培理論の解説を軸に、その中で使用される温湯処理による種子消毒法や深水管理による雑草防除など個別技術の紹介がなされている。農薬・化学肥料の多投と密接に結びつくV字型稲作理論の批判の上に立った「への字型」あるいは「太茎大穂型」のイネづくりの解説は明快である。さらに環境直接支払いなど環境創造型・環境保全型稲作への政策支援のあり方にも言及しており、稲葉氏の栽塔技術論、政策論がこの書に凝縮されている。
次に、『有機農業と野菜づくり』では、佐倉氏自身が述べている通り、有機JAS規格に細かくこだわることは避けて、健全な野菜づくりという有機農業の栽培技術の基礎に力点をおいた解説がなされている。構成としては、最初に有機農業技術の基本を、続いて自身が取り組んでいる具体的な方法について紹介する形をとっており、その丁寧な解説は慣行栽培と有機栽培の相違というだけではなく、野菜づくりの全体像を念頭に置いたものとなっている。堆肥やぼかし肥のつくり方、輪作・問作による病虫害防除などを網羅したオーソドックスな有機農業の技術書といえる。
最後の『有機農業と畜産』は、有機農業の実践家とはまた異なる社会科学者の視点から有機畜産を解説した書である。コーデックスガイドラインを踏まえ、有機畜産の技術的ポイントについて触れるとともに、ヨーロッパ、アメリカでの有機畜産の生産・流通状況について報告している。とくにアメリカの有機畜産については、憤行畜産との経済性比較を交えながら経営事例を紹介しており、大山氏の欧米の有機農業についての知見が活かされている。また後半では、日本国内での有機畜産の現状や可能性が述べられており、山地酪農に今後の有機畜産の可能性を見出している。年内には有機畜産のJAS規格の成立がほぼ確実であることからも興味深い書である。
三冊に共通していえることであるが、コンパクトで読みやすいブックレット形態なので、関係者のみならず、今後新たに有機農業に取り組もうとする人たち、あるいは興味を持ち知識を得ようとする人たちへの入門の書としても最適である。