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表紙写真

『ふみさんの自分で治す
  草と野菜の常備薬』

一条ふみ 著
自然食通信社 発行
1700円 +税

 薬草に助けられた農村の暮らし

 一条ふみさんが生れ育ったのは岩手県北の農村。真夏でも冷たい霧となってヤマセが押し寄せる冷害常襲地帯のため、稲は頭を垂れず、野菜も蕾のままということが常だった。
 自然の厳しさに加え小作制度の下、「実穫(ど)りはゆるぐない」と嘆きつつ過酷な労働に明け暮れる農民たち。
 母親は家業の蕎麦屋のかたわら、若いころ取得したやいと(灸)で神経痛、リュウマチ、トラホームなどに罹っていた人たちをほとんど無償で治療してやっていたり、当時少なくなかった癩(らい)の人たちにも、幼かったふみさんを助手に膿を取り、やいとで丁寧に治療を施していたという。
 また母に連れられていっていた民俗信仰の「集まりっこ」で、女ご衆たちが交わす話を夢の中にいるように聞くともなく聞きながら「風のように、光のように」自然にからだの中に入ってきたこと。敗戦後、大陸から引き上げてきた元軍医に教わった、医薬品が尽きた戦地で兵士たちを救ってきた薬草の知恵など。庶民にとって医療の恩恵を受けることが困難だった時代から、薬草に助けられた多くの人の事例を見聞きし、自身も長く薬草と付き合ってきた。
 ヨモギ、ドクダミ、アカザ、オオバコ、スギナ、井戸草(ユキノシタ)、フキ、キハダ……この本に出てくる薬草の多くは、健康への不安に脅かされる昨今ではハウツー本に欠かせないものとなっているが、どれも自然に育まれ、暮しと分かちがたく結びついて昔から人々の病んだからだを癒してきたものばかり。

 有機野菜と薬草で癒される都会の人たち

 北の地に生きる農民の最も近くにあって、歴史の表舞台に登場することのない人々の声を自ら編集する文集『むぎ』に記録しつづけてきたが一条さんは、五十代半ばになってから山の開拓地で有機農業を始めた。
 農作業のかたわら大根の葉やトウモロコシの毛や、山の豊富な薬草を採集し、山を訪れる人たちや野菜をとってもらっている都会の人たちに送ったりと、薬草は都市の人たちも力づけた。
 1993年の初版を読んだたくさんの人からの切実な問合せに応える丁寧な加筆と新たな内容を加えて今年改訂新版に。聞き書きの形がとられていて、温かい語り口が心に沁みてくる。

(横山 豊子)

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