白根節子著
発行:筑波書房
A5判64頁
本体価格750円+税
著者の白根節子さんは、日本の消費者運動の草分けとして、有機農業運動をリードしてきた実践的活動家である。標題のブックレットは、今日の食と農の荒廃の根源に目を注ぎ、その底知れぬ危機をのり超えてゆく筋道をわかり易く、的確に指し示す。そして、「食べ方は生き方」という白根さんの信条へ、私たちの共感をつないでくれる。
「あなたはどうやって食べていますか」という最初の設問を胸に受け止めてみると、自省すべき点が沢山あることに気付く。「食べ方を変え、国の農業政策を変えないと、さらに食の荒廃が進み、近い将来飢える日本が来る」との予見は、重く受け止めねばならない。
自給率四〇%、胃袋の三分の二を外国に預け、残飯の山を築いている日本人。そのツケは、成長期の子どもたちの心と体に深刻なかたちで現れている。また、多くの大人たちも、肉・卵・乳製品など動物性食品を好み、油脂や砂糖を摂り過ぎ、生活習慣病を引き起こしている。しかも、輸入飼料に依存した近代畜産から生み出される産物や、施設園芸でつくられる生鮮野菜などの多くは、本来の生命感をうすめ、さらに加工や流通の過程で質をそこねていく。経済効率と便利さを追求する余り、私たちは次々と大事なものを失ってきた。白根さんは、「勘違いの豊かさ」に酔い痴れてきた日本人の生きざまに警鐘を鳴らす。
しかし、そうした状況を告発するだけでなく、どうしたら危機を脱出し、健康的で本当の豊かさを手にすることができるかを探究する。そして、自分の暮らしの足元から変革の波を起こさなければいけないと主張する。早くから、本物の食べ物を求め、食卓から農を問う実践を積んできた人の提言だけに、強い説得力を持って迫ってくる。
長い歳月にわたる地道な提携活動と、広範な市民運動を通してから得た具体的な成果は混迷の時代を生きる私たちに、一条の光を投げかける。そして、「食べ方の変革と有機農業への変革しか、自給の道はない」という結びに、新たな勇気をいただいた。
現代の食と農の核心をとらえた力作だけに、一人でも多くの人に読んでいただきたい。
(星 寛治)