日本かぼちゃ トップへ

表紙
『自然の実りがわかる本』

新田穂高/城ノ内まつ子/中村顕治 著
発行:山と渓谷社
本体価格1600円+税

 春から小さな畑を借りた。自立生活を楽しく実践するためのささやかな第一歩である。
 さて、野菜を作ろう。ひばりは鳴いているし、陽は暖かい。けれども畑予定地に立ち、実際に湿ったにおいの土を目の前にすると、なにをどうしたものか皆目見当がつかない。そこでこの本。
 茨城県八郷町に茅葺き屋根の家を買い、自然の中で暮らす新田、城ノ内夫妻のシリーズ二作目である。今回は自然農園を営む中村顕治さんと共著の形でまとめた自然の実り。
 はじめに菜園のデザインの基本的な考え方が書いてある。一〇、一〇〇、三〇〇坪、それぞれどんな菜園が出来るか。輪作と日照の確保、堆肥の作り方、連作障害の対策など、初心者にも解りやすい解説付きで菜園のイメージがふくらむ。
 次に、一年一二カ月、各月に植える野菜ややって置くべき作業が図入りで載っている。陥りやすい失敗や栽培のコツ、収穫時期を長くするために種蒔き時期をずらす工夫など、家庭菜園向きのコラムも豊富である。更に、城ノ内さんがご近所のおばあちゃん達との茶飲みばなしをヒントに、手作り料理のレシピを紹介している。梅ジャムや山椒醤油、麦芽糖の水飴の作り方など食卓を飾る季節の味覚を、子ども達やご主人との楽しいエピソードと共にふっくりと綴っている。眺めるだけでも心楽しく、夏の冷えた野草茶、冬の星空の下のあたたかいぜんざい等々、暑さ、寒さまでが懐かしくなるようだ。
 各月の終わりには「中村さんの農園で聞いた」と題して中村さんが現在の自然農法に至るまでの経過や、自給生活についての考え方などを聞き書きの形にまとめてある。三三年間考え考え積み重ねて来た生活から発する言葉には重みがある。「結局面白いから作っている」「野菜づくりに必要なのは好奇心と無邪気さ」という。彼のことを「究極のアマチュア」と新田さんが呼ぶ所以だろうか。畑は耕す人の個性が出る物だということをしみじみと感じる。小さくても大きくても、自分の菜園を自分流に作って行く楽しみや自然と共にある時間の流れの優しさまで伝わってくるような気がするのである。
 土の香りと初夏の風が気持ちいい。
 さ、わたしも種を蒔こう。

(藺牟田順子)

> このページの先頭へ