
―腐蝕する食と農への処方箋
足立恭一郎 著
2200円+税
コモンズ刊
本書は、一九七〇年代から有機農業運動の研究に関わってきた、農林水産政策研究所の足立恭一郎氏がこれまでの研究を集大成してまとめたものである。
氏はBSE、野菜の硝酸汚染などの問題を《食と農の腐食》と称し、農水省の一機関の研究者でありながら政府の責任も問いつつ、問題の背景を鋭くついている。研究者らしく緻密な数字で裏づけをする一方で、氏が関わってきた有機農業生産者に対し、惜しみなく暖かいまなざしを向けている。
氏は、一九七〇年代から「市場開放しても生き残れる日本農業のあり方についての研究をはじめ、誕生間もない日本の有機農業運動に関心を持った」(あとがきより)。しかし、本書は単に有機農業の価値を認め、エールを送るだけではない。食を取り巻くさまざまな問題は、特定の企業や政府の責任だけによるものでなく、毎日買い物をしている消費者自身にもその責任の一端があるというのが著書の独自の視点だ。
「虫食い痕がなく、形や色艶のよい農産物を一年中、安い価格で購入したい」、「インスタント食品や加工食品を便利に使いたい」という思い。いずれも消費者が当たり前に供給側に求めてきたものであり、何ら非難されるものではない。だが、その当たり前の行動が結果的に、生産の大規模単作化・施設化、産地の遠隔地化、農薬・化学肥料・動物医薬品への過度の依存、野菜の硝酸汚染などの悪循環を生み出し、ついには日本の農業を衰退させた。はしがきと本文のなかで強調されている著者の言葉は説得力を持つ。
消費者のみならず、食や農にかかわるすべての主体が、無意識のうちに食と農の腐敗に加担した《無意識の加担者》であることを認めない以上、食の安全を確保するのは難しい。だが、食の安全・安心を取り戻すことができるのも、また消費者であると述べている。つまり、外観や価格にとらわれすぎたこれまでの基準を見直し、支持に値する生産者をサポートすること(=買い物という投票行為)で食の安全・安心の確保は不可能ではないと述べている。
食の安全性は待っているだけでは与えられるものではなく、自ら行動を起こすことの必要性を著者は強調している。それだけに「都市の消費者の方々に読んでほしい」とあとがきで述べている。だがこの言葉は、有機農業に携わる生産者の思いを代弁し、激励するものでもあることはいうまでもない。
(農業ライター 青山浩子)