―食の信頼構築の可能性を探る
大山 利男 著
発行:日本経済評論社
本体価格3000円+税
本書は、非経済的価値としての「有機」と経済的価値との微妙なバランスの上に成り立つ「有機食品システム」(著者がフードシステムになぞらえて作り出した造語)の国際的な動向を実態に即して検証することを目的として書かれたものである。
第一章では、有機認証の基礎をG・ルンドグレンの書を参考に説明し、それを踏まえて国際的な有機認証の動向を概説している。本章で、有機認証の具体的な仕組み、有機認証を担う有機農業団体等の現状、有機認証制度の法制化や有機認証のグローバル化等、有機認証についての基本的知識を得ることができるようになっている。
それに続く第二章から第五章では、アメリカ、ドイツ、スイスについて各国の有機農業の展開過程をふまえながら、有機認証制度と有機農業への支援策、認証団体と検査機関、有機食品・認証をとりまく生産・加工・流通、そして消費に関わる人・組織等、有機認証先進国の実態が描き出されている。その中でアメリカについては、一九九〇年に有機食品生産法が制定されたにもかかわらず、実施規則の制定が大幅に遅れていたため、全国有機プログラム(NOP)が長い間施行されなかったという実情がある。二〇〇二年一〇月よりNOPが全面的に施行されたこともあり、ここではとくに施行に至るまでの過程を含めたアメリカの有機農業の実態が詳述されている。
第六章では、まず前章までの内容に加えて有機食品をめぐる需給構造、市場・流通構造の変化に目を向けて、有機食品市場の成長と量販店の台頭を背景とした消費者ニーズとプレミアムの実態にメスが入れられている。そして、市場に依存したシステムであるがゆえに、認証費用がプレミアムを上回った場合には利用者が減り、システム自体が自然消滅するか機能不全に陥る可能性がある有機認証の限界が指摘されることになる。
最後に総括として、有機食品システムの社会的課題が述べられているが、その中で強調される単なる消費者ニーズではない、有機生産ないし有機食品にさまざまな非経済的価値を見いだした人たちの「意志」という言葉に著者の強い思い入れが感じられる。そして、その「意志」を集約し、民主的に反映できるシステムを構築することを今日の第一の課題として本書は結ばれている。
今日、日本も有機認証と有機食品の国際貿易の流れの中に否応なく巻き込まれているのが現状である。その中で、単にこの事実を否定するのではなく、状況を把握した上で次の対応を模索していかなければならない。その意味で、本書は必読の書といえる。
(横田茂永)
目次から
第一章 有機認証システムの発展とグローバル化
第二章 アメリカの有機規則をめぐる動向
第三章 アメリカにおける有機農業の地域的展開
第四章 ドイツにおける有機認証と表示規制
第五章 スイスにおける有機農業支持政策と有機市場
第六章 有機食品システムの特質と社会的課題