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『生命特許は許されるか』

天笠 啓祐 編著
発行:緑風出版
本体価格1800円+税

 本書は、生命体に特許が付与されるに至った経緯とその問題点を紹介したものである。本書を読むと、生命体に初めて特許が付与されたのは、米国の連邦最高裁がバクテリアに特許を認める判決を下したのが一九八〇年であり、遺伝子に初めて特許が付与されたのは米国のベンチャー企業がその特許を取得した一九九八年であることが分かる。ごく最近のことである。従来は、生命は、工業製品と異なり、自然にあるものであり、特許に馴染まないとの考え方があったため、生命体に特許が付与されなかった。それが、経済のグローバリゼーションが進む中で、生命や遺伝子までが金儲けの対象に飲み込まれることになり、米国から始まって特許が付与されることになったのである。
 本書は、生命体に特許を付与する不当性について、遺伝学者やバイオテクノロジー研究者自身が新しい遺伝子や細胞生物をつくりだしているわけでは全くないのであって、すでに存在していたものの構造を解明し、分離し、手を加えて改変したに過ぎず、それは、特許を付与する条件である「創造」というプロセスとは全く異なっていることを指摘している。それは、化学者が元素周期表の元素に対して特許を主張することと同じであり、おかしいとする。
 一旦、生命体に特許が認められると、特許は、種苗法に基づく権利よりも権利性が強く、農家が購入した種苗の自家繁殖行為も当該特許を実施したものとして特許権を侵害したとされる。また、先祖伝来守ってきた在来種が他人の栽培した組換え遺伝子の植物体の花粉により汚染された場合であっても、その汚染された在来種を継続して栽培すると、カナダのパーシー・シュマイザーさんのケースのように、種苗を購入してもいないのに、特許を持つ企業から特許権を侵害したとして訴訟を起こされることになる。種苗は、企業によって支配されることになるのである。生命体に特許が認められると、農業のみならず、医療や科学も食いものにされ、貧しい発展途上国にも高額な特許料が請求され、それらの人々の暮らしに打撃を与える。しかし、先進国の政府は、生命体に積極的に特許を与え、多額の予算を投入してバイオテクノロジーを振興しようと邁進している。
 本書は、こうした状況を紹介し、政府が企業と一緒になって進めている特許・技術政策の危険性に警鐘を鳴らす。本書を読むと、生命を特許の対象とすることに反対する運動を広げていく重要性をひしひしと感じられるであろう。

(本城 昇)

【主内容】
 第1章 市場経済のなかの生命・遺伝子
 第2章 生命を特許の対象にするな
 第3章 種子支配
 第4章 遺伝子特許
 第5章 30万人遺伝子バンク計画

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