JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

第47回日本有機農業研究会全国大会総会を開催

■全国有機農業全国の集い2019 in 琵琶湖
 ことし2019年の日本有機農業研究会全国大会総会は、琵琶湖湖畔で、「全国有機農業の集い 2019 in 琵琶湖」として、2月23ー24日に約300名が全国から集まり、開催されました。 琵琶湖は関西の人々の水瓶。もしも福井で原発事故が起きれば、大きな被害を受けます。
 「いのちを大切にする社会をつくる―原発訴訟と裁判官の責任」と題して、2014年に大飯原発3・4号基の運転差し止めの判決を出した元福井地裁裁判長・樋口英明さんが特別講演を行いました。 福井地裁の差し止め判決は、2018年、名古屋高裁でくつがえされました。 樋口さんは、訴訟を通して得た原発の危険性を論点をあげて話し、いかに問題あるものか、そして運転を差し止めよとする判決がいかに「当たり前」のものであるかをわかりやすく説きました。 講演は、裁判を通して原発の危険性を知った以上、そのことをみなさんに伝えなければならないと始まりましたが、講演の最後は、知った以上、みなさんもこのことを伝えてくださいと訴え、大きな感銘を与えました。
 大会テーマの「つくる人・食べる人のつながりが大事 なんやねん、PGSって?」については、基調提言1として「有機農業の原点とPGSの考え方」槌田劭さん、2として「PGSの世界の流れ」橋本慎司さんが講演しました。 有機農業は、日本有機農業研究会(日有研)の結成趣意書(1971)に述べられている多方面にわたる問題意識が原点であること、単に化学合成肥料・農薬を使わないことにとどまらず、結成直後の1970年代から今日にまで続く各地で取り組まれてきた生産者・消費者の「提携」で培われた「信頼」を土台にした「つながり」こそ、再度評価し広げるべきものと、訴えました。
 PGS(Participatory Guarantee Systems)、すなわち参加型保証システムは、国際有機農業運動連盟(IFOAM)が取り組んでいる第三者認証ではない「信頼」と有機農業の理念から生み出された「有機」の保証システムですが、日有研では、それをヒントにしつつ、「日有研・提携推奨PGSプログラム」として新たな展開を試行していきたいとしています。
 5つの分科会、2日目にはマルシェが開かれました。 分科会の一つ「琵琶湖からの発信―山から海まで、そして暮らし」では、湖(うみ)と呼ばれる琵琶湖で漁師を営む中村さんから、自然と暮らしの移り変わりのようす、美しい琵琶湖を守り続けたいという願いが伝わり、共感を呼びました。


■大会アピール PGSで提携の次代を拓く
 私たちの日本有機農業研究会は1971年の発足から48年、2年後の2021年には50周年を迎えます。 50年前の日本は、モノとお金が早く大きく回転し、モノ豊かな社会の実現に浮かれていました。
 この時流は商工業の生産性が著しく向上することで進展したのですが、「いのちの産業」である農業にとっては受難でした。 なぜなら、自然は経済効率優先の生産性とは相容れないからです。 農村から都市へ労働力が流れ、一方、農村では省力化が叫ばれ、機械化が進み、農業は農薬や化学肥料など工業資材依存へと変質を強いられていきました。 1961年成立の農業基本法により日本は、生産性を第一義とする工業的な農業を農政の基本に据えました。 この流れが農地を荒廃させ、労働災害の多発を引き起こしたのです。 生産物の質の劣化は、国民の健康を害し、ガン死時代の到来を告げました。
 このような時代に、危機感をもった先進的農民と有識者が協力して結成されたのが日本有機農業研究会です。 その結成趣意書は、「(農業の)近代化は…経済合理主義の見地から促進され…この見地からは…希望や期待を持つことはできない」と喝破しています。 そして「農業者が自らの農法を改善し…、消費者にその覚醒を呼びかけること」の必要を掲げました。 この呼びかけに、食の安全を願う消費者が応え、生産者と消費者の提携が全国的に展開することになりました。 その成果は有機農業の社会的認知を促し、「有機農業」は広く知られるようになったのです。
 日本の有機農業、その「提携」の運動は国際的にも評価を受け、「TEIKEI」として認知されています。 海外でもCSA(Community Supported Agriculture 地域支援型農業)として拡がっています。
 食卓の安全の実現に消費者の喜びと感謝のあることは、その生産者の喜びであり、励みともなるものです。 私たちは「提携」による成果に自信を持つ一方で、新規就農者とその生産物を受け入れられる流れを生み出し、激励することに力を寄せる必要があります。 そのためには、有機農産物の消費をどう拡大するのかが課題となります。
 私たちが試行しようとするPGS(Participatory Guarantee Systems)の日本版は、有機農業に期待し参加する動き(P=参加)を強めるために、 互いに理解し合い協力し合う関係によって信頼を保証し合う(G=保証)システムを広げる(S=しくみ)ものです。 この考えは「提携」の基本を発展させるものなのです。つくる人・食べる人のつながりによって有機農業を広げることであり、金銭利害で動く社会を転換することです。 2年後の50周年を活気の中で迎えるために、共に心と力を合わせ、有機農業を広げましょう。
                   2019年2月23日 有機農業全国の集い2019 in 琵琶湖 参加者一同


■第47回 日本有機農業研究会通常総会 総会メッセージ
 日本有機農業研究会(日有研)は、2年後の2021年10月に創立50周年の節目を迎えます。
 「環境破壊を伴わずに地力を維持培養しつつ、健康的で質の良い食物を生産する農業を探求し、その確立・普及を図る」ことなどを目的として、 将来に希望のもてる永続的な「あるべき農業」をめざして結成されました。農と食のつながりを大事にし、生産者・消費者が共に支え合い、 協力して食べものをつくり・はこび・たべる「提携」(生産者と消費者の提携、「産消提携」とも呼ぶ)を基軸に、 協同組合・医療・教育・消費者・環境など様々な分野の人々の参加を得て活動を続け、今日に至っています。
 1971年は、レイチェル・カーソンが『沈黙の春』で警告したDDTが禁止された年ですが、その後も農薬は使われ続け、 1990年代にはシーア・コルボーンらの『奪われし未来』でごく微量でも農薬などが“環境ホルモン”(内分泌攪乱物質)として自然界の生物(ヒト含む)に害を及ぼすことも指摘されました。 神経毒性をもつ有機リン系、ネオニコチノイド系農薬が現在も大量に使われています。 がんは二人に一人がかかり、そしてすでに農薬との関連が指摘されているように、発達障害の子どもが増え、精子の異常(奇形・数の減少)や不妊も増えています。 問題はいっそう深刻度を増し、危機的状況にあります。
 次世代に健全な未来を残すために、農薬を含む化学合成物質の使用規制の強化と同時に、有機農業のいっそうの普及拡大が喫緊の課題となっています。 1971年にDDTが禁止されたのと同様、特にネオニコチノイド系農薬の禁止を打ち出すべき時です。 そしてまた、現在の有機農業の全耕地に占める割合は、まだ1%にも達していません。 この危機の現況をみれば、1%程度ではとうていおぼつかないのは明らかです。 危機意識を広く国民で共有し、有機農業推進法による施策をはじめ、食育、地産地消、有機農業・環境教育などによる総合的な施策が求められます。
 私たちは、現在の農政に対して、企業参入を加速し、規模拡大で「強い農業」を目指し、海外に農産品目輸出を目論むことではなく、 国民の、とりわけ子どもの健康と未来を守る農業を最優先すべきことを訴えます。そしてまた、AI(人口知能)や外国人労働に依存する農業ではなく、 後継者が喜んで農業を受け継げる魅力ある心豊かな有機農業を確立し、目指していかねばならないと考えます。
 腐植がつなぐ森・里・海の繋がりの中で、私たちのいのちは先祖から受け継がれてきました。 しかし、戦後の急速な工業化、近代化のなかで、そのいのちの基盤は痛めつけられてきました。 水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくの4大公害病をはじめ、福島第1原発事故はその最たるものです。 加えて、地球の温暖化による異常気象に見舞われています。
 今年(2019年)、滋賀県大津市での「全国有機農業の集い」では、大飯原発の再稼働を認めない判決を下した樋口英明元裁判長の特別講演を行い、 「いのちの原理」に立つ有機農業であることを再確認しました。2020年には、まだ希望している段階ではありますが、 熊本県水俣市で、水俣病事件を学ぶ全国大会を、そして2021年には福島県二本松市で福島原発事故10年を振り返り、これからへ向けた全国大会を開き、 2021年の創立50周年記念につなげたいと考えています。
 有機農業は、草の根の人々のあいだから始まった農と食をめぐる日常的な活動です。食べものはいのちを育み活力をつくり出す生命の源です。 本来、それぞれの家族が耕し自給するものであり、現代であっても、単なる商品として売り買いするべきものではないはずです。 「提携」は、“自給する農家の食卓の延長上に都市生活者の食卓をつなげる”、継続的な活動です。日有研は、農と食のつながりの架け橋となる「提携」をつくりだす活動にいっそう力を入れていきます。 そしてまた、創立50周年へ向け、記念する行事、出版、映画制作などの企画を進めていきます。
 これからも、高い目標を掲げ、協力して取り組んでいきましょう。

 次は、毎回、総会に当たり、確認している活動の基本方針です。

1 平和と非暴力を愛する農業・社会をめざそう
有機農業は、すべてのいのちと共に生き、いのちを育み、いのち響き合う豊かな自然をつくる。有機農業はまた、人や社会に対しても永続的・有機的なつながりを積極的に広げ、人々の心が通い合う非暴力で平和な社会を築く営みである。今日、近隣諸国との領土問題や軍備増強、憲法改定問題などで揺れるなか、今こそ、いのち響き合い、「食と農」、「土と自然」、「平和・非暴力」を土台とする社会へ向け、「有機農業」の真価を発揮する時である。

2 「3・11」の教訓を風化させず、原発再稼働に反対し、すべての原子炉の廃炉をめざす
「3・11」の原発事故に際して私たちは、「原発は、いのちの原理に反する」「すべての原子炉廃炉に!」と、総会で特別アピールを決議し内外に発した。事故から8年経ち、原発再稼働の動きが出ているが、これに強く抗議し、私たちは再度、「原発といのち・くらしは共存できない」、「原発のない社会」をつくることを訴える。 森・里・海はいのちの基盤であり、これ以上の汚染は許されない。各地の再稼働反対の行動や原発差し止め・廃炉訴訟の裁判等に連帯していく。 福島支援について、引き続き福島東北有機農業支援委員会の福島有機農学校・猫の手の活動を行う。エネルギーについては、周辺の環境に配慮した小規模分散型・再生可能エネルギーの採用などを採り入れていくことも提唱する。

3 TPPなど自由貿易協定による、農業・農村の破壊、食の安全・健康・環境・社会的公正の後退・ 破壊を許さない
大企業優先、貿易優先のグローバリズムは、農業、農村崩壊の危機を招き、日本社会の基盤そのものをも突き崩そうとしている。今後、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)が進展し、それにより、食の安全・健康・環境・社会的公正に関わる諸制度が後退するようなことがあれば、これに断固、反対していく。

4 種子(たね)を守ろう
種子は、農業、食料の基盤となる重要なものである。グローバリズムにより、種子の企業支配が危ぶまれている。ローカルな都道府県等による公共の種子の基礎研究、育種、供給体制を堅持すべきである。「日本の種子(たね)を守る会」の活動とも連携していく。 農民が種子を採り、次の年に播いて育てること、すなわち自家採種は、“農民の権利”である。この権利が侵されないよう、守らなければならない。地域に世代を超えて伝わる在来品種は、多様で豊かな食文化を創り出してきた。だいじに守り継承されてきたこれらの種子を次世代に引き継いでいきたい。そのためのしくみについても検討を重ね、実践していく。

5 結成趣意書の原点、自立・互助の協同の精神に立ち、小規模・家族農業の有機農家と都市生活者等との「提携」をいっそう拡大し、自給・協同・有機農業を広めよう
グローバル化、大企業支配と産地間競争は、有機の世界にも及んでいる。「市場原理」に飲み込まれないための対抗軸として、今こそ地域に根差した自立する小規模・家族農家と都市生活者(消費者)との「提携」を明瞭に打ち出し、広げていこう。農と食のつながりの架け橋となる「提携」をつくりだす活動にいっそう力を入れると共に、各地で「提携フォーラム」を開催し、参加型の日有研・提携推奨PGSプログラムなどを進め、人と人の友好的関係を本質とする「提携」の社会的存在意義を広く知らせていく。 分かち合い・助け合いの「協同組合の思想と実践」はユネスコ無形文化遺産となり(2016)、「国連家族農業の10年」(2019―2029)も始まる。これに賛同し、家族農業の政策的支援推進活動に参加していく。世界大の視野に立ち、食と農と環境を確かなものにしていく活動をすすめよう。

6 次世代の子どもたちに「有機」の食べものを提供することが急務
子どもたちにこそ、新鮮で滋養に富む「有機」の食べものを食べさせたい。栄養・食育・保育にとって、有機農業が必要であり有効であることを伝え、保育園・幼稚園・学校に有機食材を使った「有機提携給食」の導入を図り、「提携」活動の新たな段階における広がりをつくりだしていく。 化学合成農薬がヒト・胎児の脳や乳幼児の身体に影響を及ぼし発達障害を引き起こすという、農薬と発達障害の因果関係が明らかになってきた。乳幼児、若者に農薬の残留していない食べものを供給し、農薬のない環境をつくることが急務である。栄養・保育・農業関連の教育機関においても、有機農業の必要性・有効性を学んでもらうことを訴えていく。 そしてまた、格差社会が広がっている今、有機食品は高いというイメージを払拭し、貧困・低所得者層にも手の届く方法を探り、そうした取組みに着手していく。

7 有機農家の複合的な農の技術の普及
本会の目的「環境破壊を伴わずに地力を維持培養しつつ、健康的で質の良い食物を生産する農業を探求し、その確立・普及を図る」を再確認し、有機農業技術の普及拡大に努める。有機農家の複合的な農の技術を伝える講習会・研究会を開催すると共に、地域での「有機農業技術ネットワーク」づくりを行う。 経験豊かな本会の有機農業アドバイザー等の有機農場を実地で体験・体感しながら有機農業が学べる「有機農学校」を各地で実施し、農の技術や暮らし方などを伝え広める。有機農業アドバイザーの増員、その他の有機農業関連アドバイザーの新設、研修及び認定についても検討していく。

8 関連団体・活動等とのいっそうの連繋
(1)各地の有機農業研究会等との連携強化
各地の有機農業研究会等とのつながりを強め、共通課題を共有し、日有研の活動に活かしていく。環境団体、消費者団体等とも連携して食の安全、環境、社会的公正などの日有研活動を強化し、広義の有機農業運動への参加者を増やしていく。
(2)有機農業関係団体等との連携強化
有機農業推進法(2006)から12年余、有機農業本来の理念・思想を主張しつつ、有機農業関係団体や、日本有機農業学会、有機農業推進協会などとも連携・協力し、提言を行っていく。環境支払いその他の課題についても、連携して有機農業を強めていく。
(3)世界の有機農業、国際的な提携ネットワーク等との連携
国際有機農業運動連盟「IFOAM-Organics International」、同アジア、及びURGENCI: まちとむらの新しい連帯=国際提携CSAネットワークとの連携をはじめ、その他、世界各地の有機農業運動や関係者と交流し、連携していく。
(4)「一楽思想を語る会」への参画
「一楽照雄を語る会」(山形県高畠町)の運営委員会(2016年発足)の委員として日本有機農業研究会が参画し、日本有機農業研究会創立者一楽照雄を顕彰し、その思想を継承普及させる活動に協力していく。「日本有機農業資料センター・たかはた文庫・栗原文庫」にも協力していく。

                      2019年2月24日 第47回通常総会で採択(於 滋賀県大津市)

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