JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会


日本有機農業研究会 総会メッセージ

(2020年度・活動の方向性)


気候変動の危機は、有機農業の危機にとどまらない。
それは人類存亡の危機であり、社会崩壊の危機だ。
相次ぐ貿易自由化の協定発効により、
食の状況、農の営みと農村に一層の危機が待ち受けている。
それに負けない活動をつくりだしていこう。

50年前、旧農業基本法(1961)により推進された化学合成農薬の多用による農薬汚染は母乳にまで及んだ。翌1971年、「環境破壊を伴わずに地力を維持培養しつつ、健康的で質の良い食物を生産する農業を探求し、その確立・普及を図る」(定款第3条)ことを目的に本会が結成された。

結成趣意書には、「本来農業は、経済外の面からも考慮することが必要であり、人間の健康や民族の存亡という観点が、経済的見地に優先しなければならない。このような観点からすれば、わが国農業は、単にその将来に明るい希望や期待が困難であるというようなことではなく、きわめて緊急な根本問題に当面していると言わざるをえない。」と述べられている。この指摘は今こそ鮮烈な警告となっている。

昨年「日有研 夏のシンポジウム2019」では、特に農薬「グリホサート製剤」や
「ネオニコチノイド系農薬」の健康への影響や環境破壊をテーマにして、これを使わないことを提案した。併せて遺伝子組換え「ゲノム編集」応用食品を使わない・食べないことをアピールした。喫緊の課題は、子どもたちの給食(保育園・幼稚園・学校等)を
「有機化」し、それも無償とすることである。

この実現には、消費者をはじめ関係者に食物と健康との関係や食品の選択についての自覚としくみの変革が必要である。その基礎は、「提携」(産消提携)、すなわち生産者・消費者が有機農業の理念に向かって協同の精神で協力してつくり・はこび・食べる
継続的な取組みにあり、それをいかに各地の地域に広げていくかにかかっている。

今年の全国大会総会を水俣で開き、当時での闘いに学んだ。
環境、食と農とくらし、社会、ひいては人類の危機に対し、持続可能な有機農業を継続する中に、これらの危機を突破するる力があることを再確認した。

子どもたちの未来のために、いのちの声の響き合う森・里・川・海をめぐる豊かな自然と共生する農と食を未来へつなぐ活動が今こそ求められている。水俣に於ける総会に当たり、有機農業の原則と結成趣意書の原点に立ち戻りつつ、改めて会員一人ひとりが活動の理念と使命を新たにし、活動していこう。



1 平和と非暴力を愛する農業・社会をめざそう

有機農業は、すべてのいのちと共に生き、いのちを育み、いのち響き合う
豊かな自然をつくる。有機農業はまた、人や社会に対しても永続的・有機的なつながりを積極的に広げ、人々の心が通い合う非暴力で平和な社会を築く営みである。
今日、近隣諸国との領土問題や軍備増強、憲法改定問題などで揺れるなか、今こそ、いのち響き合い、「食と農」、「土と自然」、「平和・非暴力」を土台とする社会へ向け、
「有機農業」の真価を発揮する時である。


2 「3・11」の教訓を風化させず、原発再稼働に反対する

「3・11」の原発事故に際して私たちは、「原発は、いのちの原理に反する」
「すべての原子炉を廃炉に!」と、総会で特別アピールを決議し内外に発した。
事故から9年経ち、原発再稼働の動きが出ているが、これに強く抗議し、私たちは再度、「原発といのち・くらしは共存できない」、「原発のない社会」をつくることを訴える。

森・里・海はいのちの基盤であり、これ以上の汚染は許されない。各地の再稼働反対の行動や原発差し止め・廃炉訴訟の裁判等に連帯していく。

福島支援について、引き続き福島東北有機農業支援委員会の福島有機農学校・猫の手の活動を行う。エネルギーについては、周辺の環境に配慮した小規模分散型・再生可能エネルギーの採用などを採り入れていくことも提唱する。


3 自由貿易協定・経済連携協定等による、農業・農村の破壊、
  食の安全・健康・環境・社会的公正の後退・破壊を許さない


 大企業優先、貿易優先の新自由主義グローバリズムにより、TPP11(2018年12月発効)、日欧経済連携協定(2019年2月1日発効)、日米貿易協定(2020年1月1日発効)が実行に移された。工業優先・新自由主義のグローバリズムは、農業、農村崩壊の危機を招き、日本社会の基盤そのものをも突き崩そうとしている。自給率が低下し、食料主権が脅かされている。食の安全・健康・環境・社会的公正に関わる諸制度の後退に、断固、反対していく。

 特に、「ゲノム編集」応用食品への「表示義務づけ」の要求運動、環境影響や毒性が明らかになった農薬グリホサート製剤とネオニコチノイド系農薬の規制強化要求を強める。他方、これらを「使わない」運動や使わないですむ農法の普及やしくみづくり(産消提携の普及など)にも力を入れていく。


4 種子(たね)を守ろう

種子は、農業、食料の基盤となる重要なものである。ところが、主要農作物種子法の廃止、種苗法改訂論議にみられるように、種子の企業支配の懸念が強まっている。ローカルな都道府県等による種子条例等の制定により、公共の種子の基礎研究、育種、供給体制を堅持すべきである。「日本の種子(たね)を守る会」の活動とも連携していく。

農民が種子を採り、次の年に播いて育てること、
すなわち自家採種は、“農民の権利”である。
この権利が侵されないよう、守らなければならない。
地域に世代を超えて伝わる在来品種は、多様で豊かな食文化を創り出してきた。
だいじに守り継承されてきたこれらの種子を次世代に引き継いでいきたい。
そのためのしくみについても検討を重ね、実践していく。


5 結成趣意書の原点、自立・互助の協同の精神に立ち、
  小規模・家族農業の有機農家と都市生活者等との「提携」をいっそう拡大し、
  自給・協同・有機農業を広めよう


グローバル化、大企業支配と産地間競争は、有機の世界にも及んでいる。「市場原理」に飲み込まれないための対抗軸として、今こそ地域に根差した自立する小規模・家族農家と都市生活者(消費者)との「提携」を明瞭に打ち出し、拡げていこう。農と食のつながりの架け橋となる「提携」をつくりだす活動にいっそう力を入れると共に、各地で「提携フォーラム」を開催し、参加型の日有研・提携推奨PGSプログラムなどを進め、人と人のつながり(友好的関係)を本質とする「提携」の社会的存在意義を広く知らせていく。

分かち合い・助け合いの「協同組合の思想と実践」はユネスコ無形文化遺産となり(2016)、国連・持続可能な開発目標SDGsと共に「国連家族農業の10年」(2019―2028)も始まった。世界大の視野に立ち、食と農と環境を確かなものにしていく活動をすすめよう。


6 子どもたちに「有機」の食べものを提供することが急務

子どもたちにこそ、新鮮で滋養に富む「有機」の食べものを食べさせたい。化学合成農薬がヒト・胎児の脳や乳幼児の身体に影響を及ぼし発達障害を引き起こすという、農薬と発達障害の因果関係が明らかになってきた。乳幼児、若者に農薬の残留していない食べものを供給し、農薬のない環境をつくることが急務である。

栄養・食育・保育にとって、有機農業や有機農産物等が必要であり有効であることを伝え、保育園・幼稚園・学校等の給食に、「有機食材」を導入し、しかも無償としていくしくみをつくりだしていく。栄養・保育・農業関連の教育機関においても、有機農業の必要性・有効性を学んでもらうことを訴えていく。

そしてまた、格差社会が広がっている今、有機食品は高いというイメージを払拭し、貧困・低所得者層にも手の届く方法を探り、そうした取組みに着手していく。


7 有機農家の複合的な農の技術の普及

本会の目的「環境破壊を伴わずに地力を維持培養しつつ、健康的で質の良い食物を生産する農業を探求し、その確立・普及を図る」を再確認し、有機農業技術の普及拡大に努める。有機農家の複合的な農の技術を伝える講習会・研究会を開催すると共に、地域での「有機農業技術ネットワーク」づくりを行う。

経験豊かな本会の有機農業アドバイザー等の有機農場を実地で体験・体感しながら有機農業が学べる「有機農学校」を各地で実施し、農の技術や暮らし方などを伝え広める。有機農業アドバイザーの増員、その他の有機農業関連アドバイザーの新設、研修及び認定についても検討していく。


8 創立50周年記念事業への取組み

@50周年記念映画の制作
A出版(農業技術、提携、50年史など)
B記念グッズ(手拭い、Tシャツなど)
C記念イベント―各地の有機農業団体などとの連携を図る。

・横の連携強化
世界の提携CSAが草の根・ローカルな地盤を通して連帯、提携CSA憲章をつくっている→日本・「提携」などのローカルな食と農の連合を端的に表現、横につなぐ共通のビジョンとしての「生産者・消費者の提携CSA憲章」(仮称)を策定していく。


9 関連団体・活動等とのいっそうの連繋

(1)各地の有機農業研究会等との連携強化
各地の有機農業研究会等とのつながりを強め、創立50周年記念事業などを通し、共通課題を共有して相互の活動に活かしていく。環境団体、消費者団体等とも連携して食の安全、環境、社会的公正などの日有研活動を強化し、広義の有機農業運動への参加者を増やしていく。

(2)有機農業関係団体等との連携強化
有機農業推進法(2006)から14年余、有機農業本来の理念・思想を主張しつつ、有機農業関係団体や、日本有機農業学会、有機農業推進協会などと連携・協力し、運動を強めていく。

(3)世界の有機農業、国際的な提携ネットワーク等との連携
国際有機農業運動連盟「IFOAM-Organics International」、同アジア、及びURGENCI:まちとむらの新しい連帯=国際CSA提携ネットワークとの連携をはじめ、その他、世界各地の有機農業運動や関係者と交流し、連携していく。

(4)「一楽思想を語る会」への参画
「一楽照雄を語る会」(山形県高畠町)の運営委員として日本有機農業研究会が参画し、日本有機農業研究会創立者一楽照雄を顕彰し、その思想を継承普及させる同会に協力していく。

(5)「国連家族農業の10年」に賛同し、「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」に加入した。有機農業を踏まえ、「食料農業農村基本計画」見直しやその他政策提言を行っていく。


第49回日本有機農業研究会通常総会で決議 2020年1月26日 於 熊本県水俣市もやい館

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