JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 第3回 『タイマグラばあちゃん』上映と対談

2005年 食と農 市民セミナー(全5回) 食の安全・安心は有機農業から

タイマグラばあちゃんのポスター

 監督・澄川嘉彦

生きるのに何が大事かを語りかける『タイマグラばあちゃん』

 何年前だったか、民宿を営む友人の山代陽子・奥畑充幸さん夫妻を早池峰の麓に訪ねた。荷物を置くか置かないうちに、私の腕を引っ張っていった先は、隣のおばあさん向田マサヨさんの家だった。陽子の最大の歓待が、「マサヨ婆に会わせること」だったのである。マサヨ婆は、三角巾ですっぽりと髪を包み、臼の前に座って、お月さんのウサギのような杵で「凍(し)みホド(じゃがいも)」を叩いていた。でんぷんを作っているのだ。2月、納屋の外壁には皮を剥いたじゃがいもが、数珠のように掛けられていた。冬の陽に何度も解けたり凍ったりを繰り返し、充分に凍みたら粉にする。サヨ婆は仕事の手をとめていろりに鍋を掛け、粉にしたばかりのじゃがいもの団子汁をごちそうしてくれた。
 そのマサヨ婆が、『タイマグラばあちゃん』(監督澄川嘉彦)という映画になった。雪の残る春の日、人1人が入るような樽か湯気の上がっている。長靴を履いて中の大豆を踏むばあちゃん。大豆糀の3年味噌作りがはじまる。天井に味噌玉が次々ぶら下がっていく。その手際よさ。「種を播けば草を引き、収穫すれば寒にさらして仕舞う。お客のある時が休みだ」「寒さがわれに仕事をさせる。寒くねえば豆腐も凍んねえし、じゃがいもも凍みさねばなんねえ」と映画の中でばあちゃんはいう。
 戦後10軒ほどで入植したタイマグラは、寒さに慣れた岩手の人ですら逃げ出すような地だった。電気も1988年に、日本で最後に通じたところ。団長の向田久米蔵爺を残して、60年代にみんな下山してしまった。「割ってある薪がなくなったら山を下りろ」という言葉を残して逝った久米蔵爺に背いて、裏の防風林を切って薪にしながら住み続ける。作物を山の生き物に食べられても、もともと彼らが自由にしていたのに、人間が後から来たんだからと意に介さず、また植え直す。大雨の中、久米蔵爺が使っていた蓑笠をつけ、放っておくと2人で作った畑土が流されるからと出ていき、水が止まれば沢を登り、木の葉でつまった樋を直す。働きづめの山家暮らしを「極楽だぁ」と日々を送るばあちゃん。
 体調を崩して里に下り、「われの心から山は絶えねえ。夢にも見ている、山は。どこも夢に見ないが、タイマグラは夢にも見る」と懐かしみつつ亡くなったばあちゃんの味噌は、山代家に引き継がれた。ちょっと燻しくさい彼女の味噌が、わが家の食卓を賑わした。まだまだ不細工な味噌玉も、そのうち上手になるだろう。「生きる」を静かに語るドキュメンタリーである。(笠原)

 岩手県の早池峰山の麓の村を車で30分も登ったところに、タイマグラはあります。この地名は諸説あるようですが、アイヌ語で「水のたくさんあるところ」「森の奥へと続く道」というようです。戦後の開拓団の団長として入った久米蔵さんの元に嫁いだ向田マサヨばあさんは、ほんの数年前までそこに住んでいました。2人は、一緒に開拓に入った仲間たちが、1964年のオリンピック景気前後に、相次いで山を下りた中で、最後まで住み続けた。そんな夫妻を澄川嘉彦氏がNHKに勤務中から、退職してタイマグラに移り住んでまで撮り続けた15年間の記録をまとめたものです。
 この映画「タイマグラばあちゃん」は、「2004年度第78回キネマ旬報文化映画ベスト・テン」第5位、「日本映画ペンクラブ会員選出 日本映画ノンシアトリカル 」第5位に輝きました。
 当日は、澄川嘉彦監督と山代陽子の対談の他、タイマグラの住人による作品の展示などを計画しております。
 会場の明日館(重要文化財・建立1921年、01年改修完成)は、帝国ホテルの旧本館を設計したF・L・ライトの設計。講堂は、その弟子遠藤新氏の設計です。


■日時 2005年7月23日(土曜日)14時より(開場13時30分)16時30分

■会場 自由学園明日館(池袋・目白より徒歩10分)

■ゲスト 澄川嘉彦氏(監督・タイマグラ住人)山代陽子さん(タイマグラ住人・出演者)

■チケット 前売り1500円・当日2000円、小・中学生800円

■問合せ・チケット予約
  FAX 03-3818-3417(日本有機農業研究会)
  E-mail : mail

■主催 日本有機農業研究会・タイマグラ上映会723・「子どもとゆく」

■共催 社団法人農山漁村文化協会・洋泉社・「田舎暮らしの本」・コモンズ・自然食通信社・アジア太平洋資料センター・無量光寿庵はる治療院


第1回 2005-05-31 「狂牛病」が問いかけるもの〜なぜ人間は食べ続けなければならないか
第2回 2005-06-20 食の伝承と消費者交流会 有機野菜をおしゃれに食べよう〜フランス風

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