JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

       日本有機農業研究会とは

本来あるべき「農業」と「食べ方」「暮らし方」の追求

 日本有機農業研究会は、有機農業の探究、実践、普及啓発、交流等を目的に生産者と消費者、研究者を中心として1971年に結成されました。運営は会費とボランティアで賄い、機関誌にも広告を一切掲載しないで独立性を保持している自主的な団体です。
 目的には、「環境破壊を伴わず地力を維持培養しつつ、健康的で味の良い食物を生産する方法を探究し、その確立に資するとともに、食生活をはじめとする生活全般の改善を図り、地球上の生物が永続的にに共生できる環境を保全すること」を掲げ(規約第四条)、各地で現在約4000名の会員が多彩な活動を展開しています。本会の趣旨(結成趣意書参照)、規約等に賛同する個人は誰でも会員になることができます。


本会の歩み

 発足した1971年前後は、高度経済成長期のただ中であり、農業においても生産性を上げるために農薬・化学肥料・薬剤を大量使用する近代化農業が推進され、その弊害が明るみになってきました。農業者やその家族が生命・健康を脅かされたり、家畜の異変や土の疲弊、環境の悪化を感じとった生産者は、環境・健康を破壊しない農業を実践し始めました。他方、食べ物の安全性と農業・環境の現状に強い不安を抱いた消費者(都市生活者)たちは、無添加食品や安全な卵・牛乳などを求めて活動を始めました。本会の結成は、これらの生産者、消費者を結びつけるとともに、相互の協力連帯のもとで有機農業を確立し社会的に広げていくことになったのです。
 結成を呼びかけたのは、協同組合運動家で当時協同組合経営研究所理事長をしていた一楽照雄でした。愛媛で自然農法を実践する福岡正信、食べものと健康との強いつながりを指摘し無農薬栽培を進めた医師・梁瀬義亮(慈光会)、農薬禍を憂えて農村医学を創始した若月俊一(佐久総合病院)らに触発され、初代代表幹事に塩見友之助(元農林事務次官)、常任幹事に一楽ほか3名、事務局長築地文太郎、そして土壌微生物の重要性を説く足立仁、横井利直、自然農法の指導者露木裕喜夫など11名を幹事として、旗揚げしました。
 当初は、アメリカ有機農業運動の先駆者・ロデイルを招いたり、食べ物、医学、農学などに関する研究会的な集まりでした。2〜3年経つと、全国各地で期せずして生産者と消費者が共に有機農業を進める実践運動が起きてきて、会員も増え始めました。74年の総会では、協同組合の精神に則って、自立した農民と消費者がお互いに扶け合いながら世の中をつくり直していく、農協・生協も含む生産者と消費者が提携する実践運動の会であるというアピールをしました。当時いわれていた産直・共同購入(中間業者を抜き、価格をより安く)をのり超え、双方が相互理解を深め、労力や資金を出し合い、自主的な配送によって生産者の拠点から消費者の拠点(配送ポスト、ステーションなど)に継続的に農産物を手渡していく、新たな産直・共同購入を「提携」と名付けたのです。
 78年の第4回総会では、今日も基本理念となっている「生産者と消費者の提携の方法」(提携十か条)を採択しました。これは、すでに成果を納めていた人々が集まり、一晩中話し合ってとりまとめた、実践に裏づけられた指針です。


生産者と消費者の提携の方法十か条(要旨) →(原文へ)

 ・単なる「商品」の売り買い関係でなく、人と人との 友好的つきあい関係(有機的人間関係)を築く。
 ・生産者と消費者の合意により、計画的に生産する。
 ・消費者は生産物を全量引き取る。・互恵精神に基づいて、価格を取り決める。
 ・相互信頼のために交流を深める。
 ・生産者と消費者が農産物を自主配送する。
 ・グループを民主的に運営する。
 ・学習活動を重視する。
 ・グループの会員数の適正規模を堅持する。
 ・理想に向かって、逐次前進する(理念を持って有機 農業を実践する。自然を大切にした生活をする)。
 「提携」と共に、本会は「自給」を運動の中心に据えてきました。自給を基礎にした農業は、多種多様な品目を少量ずつ作り、畜産を組み合わせた有畜複合小農経営となり、堆厩肥・飼料・種子なども自給する自然に調和した循環的な農業です。農薬や化学肥料など合成化学物質に依存しないばかりでなく、地域の資源をできるだけ活用し、輪作をはじめ、共生植物や天敵の昆虫による防除、合鴨や鯉による除草など、伝統に学びつつ、さらにそれらを現代に活かすさまざまな創意工夫で進める新しい農業です。
 提携グループの消費者は、このような新たな農法に取り組む生産者のつくる食べ物を収穫の多寡や形状の如何にかかわらず引き取り、手間のかかる作業に加わったり、選別・包装の簡略化に協力しながら、応援してきました。話し合って作付や価格を決め、既存の流通制度に拠らずに自分たちで配送を行うことも、農家の自立と経営的な安定、農法の持続性を支えることにつながります。それらを通して、消費者も農業への理解を深め、間引き菜からとうが立つまで、田畑の四季に合わせて旬のものを食べる工夫をしながら食生活を健康的なものに変革してきました。
 生産者と消費者の「顔と顔のみえる関係」が育まれるなかで、農家の食卓はそのまま都市消費者の食卓につながっています。そして、地域の小規模の食品加工業者や山、海の産物ともつながり、地域の自立をうながしています。提携は、単に流通方法の変革だけでなく、その相互交流のなかで、現代の農業技術体系、経営形態、農業労働観、流通システム、食物の消費構造、そして、食料・農業政策などをそれぞれ問い直し、農業を本来の「あるべき姿の農業」に取り戻し、同時に流通のあり方や食生活を改善し、生活の変革をうながすダイナミックな等身大の草の根運動なのです。
(図参照)


        有機農業運動の理念と方法

有機農業運動の理念と方法の概念図

 (出典)   保田茂  「日本の有機農業」   ダイヤモンド社、1986年


 本会では、会合などの機会あるごとに、生産者が自ら採取した良い品種の種を交換する種苗交換会を開催しています。種子についても農家の自立を図り、有機農業にふさわしい品種を自分たちで作り、広めていくためです。また、海外との交流にも努め、フィリピン・ネグロス島での自給的な農業の指導を行ったり、外国からの研修生も受け入れるなど交流に努めています。

 他方、こうした有機農業の提携運動が広がるなかで、そこで取り交わされる安全な有機農産物・有機加工食品が注目され、専門に取り扱う事業者やこれらを販売する食料品店、デパート、スーパーマーケットも増えてきました。健康・安全・環境問題の深刻化から消費者の関心も高まり、需要も急増しています。本会は、食品マーケットにおいて氾濫する「有機」「無農薬」「低農薬・減農薬」などの食品表示の混乱に対し、1988年には、「有機農産物とは、生産から消費までの過程を通じて化学肥料・農薬等の合成化学物質や生物薬剤、放射性物質、(遺伝子組換え種子及び生産物等)をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法で生産されたものをいう」(かっこ内は98年に追加改定)という「有機農産物の定義」を公表しました。
 1998年には、有機農業の指針ともいえる「有機農業のめざすもの」として、・安全で質のよい食べ物の生産、・環境を守る、・自然との共生、・地域自給と循環、・地力の維持培養、・生物の多様性を守る、・健全な飼養環境の保障、・人権と公正な労働の保障、・生産者と消費者の提携、・農の価値を広め、生命尊重の社会を築くを決め、生産基準案の検討も行っています。
 今日、70年代に直観した数々の不安は、現実的なものとなって迫ってきています。環境問題は地域を越えて地球規模に広がり、人々の健康もむしばまれ、グローバル化の進むなかで農業基盤さえ侵されようとしています。世界の食糧問題もいっそう深刻化が予想されます。21世紀へ向けて、まず足元の自給を固めること、そして〈農〉と〈食〉を通した人びとの交流をいっそうすすめ、楽しくやりがいのある農業や、健康的で環境にもよい食べ方、暮らし方の追求をしています。


本会の主な活動

日本有機農業研究会大会・総会

 第26回・98年「優気・遊機・有喜・・古きをたずね、時代をひらく」(京都)、99年「環境ホルモンと遺伝子組換えを超えて」(茨城)など、有機農業運動の発展と相互交流をめざし、各地の有機農業研究会や関係団体と共に毎年2月に開催。

講演会・シンポジウム・セミナーなど普及啓発活動

 「新農基法を考える徹底討論会」、「300号記念これからの有機農業シンポジウム」、「遺伝子組換え食品に反対し、大豆の自給を!」(いずれも97年)、「アトピーとたべもの」(98年)など。

有機農業入門講座

 有機農業入門講座(新規就農者や有機農業志願者を対象とした研修会)、技(わざ)研究会(各地域で開く技術交流)、研究会、研修会、各部会の集まりなど、研究・研修活動

種苗交換会

 年1〜3回開催。種苗の自給をめざし、各人自慢の自主採取種子を持ち寄り会員間で交換。種子に込められた技術交流も行う。

機関誌『土と健康』(月刊)の発行

 結成の翌1972年2月に創刊(78年まで『たべものと健康』)、98年1月には300号記念号として「21世紀の有機農業−古きに学び、新しい時代を拓く」特集号を発行。本会開催のシンポジウム・研究会等の報告、食と農、環境をめぐる最新情報、各地の有機農業に関する活動情報のほか、特集形式による社会的課題への積極的問題提起も行う月刊誌。会員配布。

資料等の発行

 シンポジウム記録『食と農と長寿農』、有機農業運動資料『有機農業への道』、『有機農業カレンダー』(毎年)、『全国有機農業生産者マップ・・自給と提携でいのちを支え合う人びと』、『有機農業の基準問題への取組み』など、随時発行。

社会的課題への発言と取組み、行政への提言など

 有機農産物表示や検査・認証問題に対する提言、遺伝子組換え作物に関する提言、新基本法に対する提言など。96年9月には、本会「基準検討委員会」を設置、「IFOAM基礎基準を参考とした討議資料」公表(第1次97年、第2次98年)、定義、基準、検査認証問題等を検討。

国内外の有機農業関係団体、環境保護団体、消費者団体などとの連携・協力

 1993年には、国際有機農業運動連盟(IFOAM)の会員団体として、第1回「有機農業アジア大会」を開催(埼玉)、「遺伝子組換え食品いらない、世界行動デー」への参加(97・98年)など。


次のような部が活動しています

生産部

 『全国有機農業生産者マップ』『有機農業ハンドブック』の作成を提案し、参画。今後はこれらの刊行物を活用しながら生産者同士の交流、有機農業技術の交流を重ねていくつもりです。

種苗部

 有機農業に適した種苗の自給、交換、紹介など、種苗に関する交流を行っています。各地で「種苗交換会」を開催するほか、『土と健康』誌上で「私がおすすめの種苗」を連載中。種苗に関する話題も提供しています。

自給部

 「五穀豊穣」の最後の一饒、“米”までも輸入するようになり、日本は“根のない国”、まさに“切り花国家”の道を歩んでいます。食べものを自給することこそは、近づきつつある飢えを防ぎ、健康で安心の行く社会を築き、環境を守り、国際社会に貢献し、いのちを大切にする心を養うと確信し、食べものを質量ともに豊かに自給する方策をあらゆる角度から検討しています。当面は、主食の米麦一貫生産体制の復活に向けて、実践、理論の両面から生活部会と連携して活動していきます。

生活部

 当面の課題は、「雑穀」や「五穀」と呼ばれてきたそば、きび、ひえ、あわ、大麦、小麦、豆類などを見直すこと。これらの穀物と旬の野菜を使って、健康によくおいしい、風土に根ざした食事を、つくる側と食べる側が一緒になって広めていきます。

国際部

 世界中の有機農業を推進している人びとは、“有機農業”の広い概念では一致しても、その普及や運動の方法は、まさに千差万別です。国際有機農業運動連盟(IFOAM)を中心とした世界の有機農業の動きを紹介し、また逆に日本の動きを積極的にアジアへ、また世界へと発信しながら、日本の有機農業の展開に資していきたいと考えています。日本の有機農業の実情を「JOAA NEWS」として随時発行、外国、特に第三世界から有機農業関係者の受け入れ、外国の有機農業視察するツアーの企画、IFOAM機関誌等の翻訳紹介(機関紙『土と健康』などに掲載)、IFOAM−アジアのニュースレターの編集・発行、情報交換と人事の交流などを行っています。

提携と基準研究部

 「提携」を基礎にした有機農業運動においても「基準」の問題は看過できないことから、1990年、内外の基準認証問題などについて研究活動を始め、その成果を適宜、機関紙『土と健康』等に発表してきました。より広く深い視野から、提携と基準問題に関する研究活動を続けていきます。

青年部

 農産物の自由化、米の減反等、農業・農村にとって明るい兆しがなく、農村では、担い手が少なくなっています。他方、都市には、「農業をしたい」「農的くらしがしたい」と思う人がふえています。青年部は、若い生産者、学生、就農を考えたり農に興味のある人とをつなぐ接点となって、情報交換、意見交換を行い、農業や農業周辺の技術を学んで、明るい楽しい農村を創ろうと、次のようなことを行っています。・定例会、(現地研修会含む)、・新規就農や研修先等の情報提供、・機関紙『土と健康』の青年部のページ担当(農にかかわる女性の意見、気持ち、考え等をリレー式に綴っていく企画など)、・「有機農業入門講座」の企画・実施に参加。また、現場を重視した規模の小さい入門講座を各地で創っていきたいと考えています。

科学部

 1996年、遺伝子組換え食品(大豆、なたね等)の輸入が始まったことから、このような食の安全と農業・環境を脅かす科学技術の利用等について、問題点を解明し社会的な発言を強めるために部会を設置。さらに、環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)問題や病原性微生物の対策問題などにも取り組んでいます。


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