JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 「有機農業の推進に関する法律」が制定されました

日本有機農業研究会 提携と基準部

基本理念を定め、総合的な政策の推進へ

 2006年12月の臨時国会(第165回国会)において、「有機農業の 推進に関する法律」(略称有機農業推進法)が全会一致で成立しま した。超党派の有機農業推進議員連盟(谷津義男会長、ツルネン・ マルテイ事務局長、161名議員加盟)の提案によるもので、まず 12月5日、参議院農林水産委員会において委員長提案により審議な し・全会一致で通過、翌6日、同本会議でも趣旨説明の後、採決、 通過。衆議院も同様に7日に農林水産委員会、8日の本会議で成立 しました。その後、12月15日に公布され、同日、施行されました。
 なお、参議院農林水産委員会では、提案に先立ち、11月30日に2 議員からの質疑がなされています。一つは、議連会員の和田ひろ子 議員がこの有機農業推進法の評価について農林水産大臣に質問、松 岡利勝大臣は、有機農業推進議員連盟の幅広い活動と努力に感謝す ると共に、「農林水産省挙げて、歓迎し、感謝している」と述べて います。同委員会ではさらに、議連副会長福本潤一議員が有機農業 の推進への取組みの現状について質問、農林水産省西川孝一生産局 長は、「農業生産全体の在り方を環境保全に貢献している営みに転 換するということを基本として、現在環境保全型農業を推進してい る」と、その具体的取組みについて述べました。
 この法律は、「有機農業の推進に関し、基本理念を定め、並びに 国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、有機農業の推 進に関する施策を総合的に講じ、もって有機農業の発展を図るこ と」を目的とするものです(第一条)。農林水産大臣は基本理念に のっとり有機農業の推進に関する基本方針を定め、都道府県など地 方公共団体はそれに即して推進計画を立てるなど、有機農業の推進 に関する総合的な施策を行うことが責務となります。
 したがって、今後、国が策定することになる基本方針にどのよう なことがらが盛り込まれるか、そしてさらに、都道府県段階、市町 村段階でどのような推進計画をつくるかが課題になってきます。な お、地方公共団体の推進計画の策定については、「定めるよう努め なければならない」と、努力規定になっています。これは、すでに 他の条例や名称によって進めている白治体もあるなど、多様な取組 みがありえると説明されています。

「消費者との連携の促進」も基本理念に

 この法律では、次のようにこの法律における「有機農業」を定義 しています。有機JAS規格における「有機農産物」の生産方法の 規定よりも広い意味あいになっています。
 「この法律において『有機農業』とは、化学的に合成された肥料 及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないこ とを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低 減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう」(第2条)
 基本理念(第3条)では、「有機農業の推進」をする際の理念と して、まず、「農業者が容易に有機農業に従事することができるよ うにすることを旨として行われなければならない」こと、「農業者 その他の関係者が積極的に有機農業により生産される農産物の生 産、流通又は販売に取り組むことができるようにする」とともに、 「消費者が容易に有機農業により生産される農産物を入手できるよ うにすることを旨として行われなければならない」ことが述べられ ています。
 その中で、有機農業の推進は、「農業の持続的な発展及び環境と 調和のとれた農業生産の確保が重要」、「有機農業が農業の白然循環 機能を大きく増進」、「農業生産に由来する環境への負荷を低減」す るものであること、また、消費者にとっても、「消費者の安全かつ 良質な農産物に対する需要が増大」しているが、(有機農業の推進 は)そのような「需要に対応した農産物の供給に資する」ものであ ると記されています。
 また、基本理念では、有機農業の推進の際には、「消費者の理解 の増進が重要」なので、「農業者その他の関係者と消費者との連携 の促進を図りながら行われなければならない」こと、また、「農業 者その他の関係者の白主性を尊重しつつ行われなければならないこ と」とも記されています。
 そのほか、同法では、国及び都道府県は、有機農業者等の支援 (第8条)、技術開発等の促進(第9条)、消費者の理解と関心の増 進(第10条)、有機農業者と消費者の相互理解の増進(第11条)、調 査の実施(第12条)、国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業 の推進のための活動の支援(第13条)をすること、国の地方公共団 体に対する援助(第14条)、そしてまた、有機農業者等の意見の反 映について必要な措置を講じること(第15条)を定めています。

地産地消・地域白給、食農教育、まちづくりも視野に

 このように、この法律は、有機農業の推進を「環境と調和のとれ た農業生産」であり、また「農業の白然循環機能を大きく増進」、 「農業生産に由来する環境への負荷を低減」するものであること、 また、消費者にとっても「消費者の安全かつ良質な農産物」を供給 するものであると位置づけた初めての国の法律です。いわゆる理念 法であり、上述のように、これをどのように活かすかは、今後の基 本方針や推進計画、あるいは、他の関連施策との連携にかかってき ます。同時に、いうまでもなく、各地・全国における運動のあり方 が決め手になるでしょう。


有機農業の推進に関する基本的な方針の公表について

 有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)第6条第1項の規定に基づき、有機農業の推進に関する基本的な方針を次のとおり定めたので、同条第4項の規定に基づき、公表する。

平成19年4月27日
農林水産大臣松岡利勝

有機農業の推進に関する基本的な方針

はじめに
 有機農業は、農業の自然循環機能を増進し、農業生産活動に由来する環境への負荷を大幅に低
減するものであり、生物多様性の保全に資するものである。また、消費者の食料に対する需要が高
度化し、かつ、多様化する中で、安全かつ良質な農産物に対する消費者の需要に対応した農産物
の供給に資するものである。
 食料・農業・農村基本計画(平成17年3月25日閣議決定)においても、我が国農業生産全体の在
り方を環境保全を重視したものに転換することとしており、こうした特徴を有する有機農業について
も、その推進を図ることとする。
 このため、農業者が有機農業に容易に取り組め、また、消費者が有機農業により生産される農産
物を容易に入手できるよう、生産、流通、販売及び消費の各側面において有機農業の推進のため
の取組が求められている。
 有機農業は、自然が本来有する生態系等の機能を活用して作物の健全な生育環境の形成や病
害虫の発生の抑制を実現するものであるが、その一方、現状では、化学的に合成された肥料(以下
「化学肥料」という。)及び農薬を使用する通常の農業に比べて、病害虫等による品質・収量の低下
が起こりやすいなどの課題を抱えており、未だ取組は少ない。
 一方、消費者や実需者の多くは、有機農業により生産される農産物を、「安全・安心」、「健康によ
い」とのイメージによって選択しており、農業の自然循環機能を増進し、農業生産に由来する環境へ
の負荷を大幅に低減するものであり、生物多様性の保全に資する有機農業についての消費者や実
需者の理解は未だ十分とはいえない状況にある。
 こうした状況を踏まえ、有機農業について、その推進に関する基本理念を明らかにするとともに、国
及び地方公共団体が、農業者その他の関係者及び消費者の協力を得て生産、流通、販売及び消費
の各側面から有機農業の推進に関する施策を総合的に講じることにより、我が国における有機農業
の確立とその発展を目指すため、平成18年12月、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律
第112号。以下「有機農業推進法」という。)が施行された。
 この有機農業の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)は、有機農業推進法第6
条第1項の規定に基づいて策定するものであり、有機農業の推進に関する施策を総合的かつ計画
的に講じるために必要な基本的な事項を定めたものであるとともに、都道府県における有機農業の
推進に関する施策についての計画の基本となるものである。
 今後は、基本方針に基づき、国及び地方公共団体は、透明性、公平性の確保に留意しつつ、農業
 者その他の関係者及び消費者の協力を得て有機農業の推進に取り組むものとする。
 なお、基本方針は、平成19年度からおおむね5年間を対象として定めるものとする。

第1 有機農業の推進に関する基本的な事項
 1 農業者が有機農業に容易に従事することができるようにするための取組の推進
   化学肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とする有
  機農業は、現状では、病害虫の発生等に加え、多くの場合、労働時間や生産コストの大幅な増
  加を伴う。
   こうした有機農業の抱える課題を克服し、農業者が容易に有機農業に従事できるようにするこ
  とが重要であることから、有機農業に関する技術体系を確立・普及するための取組を強化すると
  ともに、有機農業の取組を対象とする各種支援施策を充実し、その積極的な活用を図ることが必
  要である。

 2 農業者その他の関係者が有機農業により生産される農産物の生産、流通又は販売に積極的
  に取り組むことができるようにするための取組の推進
   有機農業への取組は未だ少ないものの、有機農業により生産される農産物に対する潜在的な
  需要はあると考えられることから、農業者が有機農業による経営を安定して展開できるよう需要
  を的確に捉えた販路の開拓に取り組むことが重要である。
   このため、有機農業の取組を対象とする各種支援施策を充実し、その積極的な活用を図ること
  により有機農業による農産物の生産を更に増加させていくとともに、有機農業に取り組む農業者
  (以下「有機農業者」という。)や農業団体等と、農産物の流通業者、販売業者又は実需者とが連
  携・協力し、有機農業により生産される農産物の流通、販売又は利用の拡大に取り組むことが必
  要である。

 3 消費者が容易に有機農業で生産される農産物を入手できるようにするための取組の推進
   消費者の安全かつ良質な農産物に対する需要が増大している中、有機農業により生産される
  農産物の生産・流通量を拡大し、当該農産物を消費者が容易に入手できるようにすることが重要
  である。
   このため、有機農業により生産される農産物の生産の拡大に努めるとともに、有機農業者、流
  通業者、販売業者、実需者及び消費者の間で、その生産、流通、販売及び消費に関する情報が
  受発信されることが必要である。
   さらに、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和25年法律第175号。以
  下「JAS法」という。)に基づく有機農産物等についての適正な表示を推進することにより、消費者
  の有機農産物等に対する信頼を確保することが重要である。

 4 有機農業者その他の関係者と消費者との連携の促進
   有機農業の推進に当たっては、消費者の有機農業に対する理解の増進が重要であることか
  ら、食育、地産地消、農業体験学習、都市農村交流等の取組を通じて、消費者と有機農業者そ
  の他の関係者との交流・連携の促進を図ることが必要である。

 5 農業者その他の関係者の自主性の尊重
   有機農業の推進に当たっては、我が国における有機農業が、これまで、専ら、有機農業を志向
  する一部の農業者その他の関係者の自主的な活動によって支えられてきたことを考慮し、これら
  の者及び今後有機農業を行おうとする者の意見が十分に反映されるようにすることが重要であ
  る。
   また、有機農業に関する技術体系が十分に確立されておらず、有機農業による農産物の生産
  も未だ少ない現状において、有機農業の推進に当たっては、地域の実情、農業者その他の関係
  者の意向への配慮がないままに、農業者その他の関係者に対し、有機農業による農産物の生
  産、流通又は販売を画一的に進めることのないよう留意する必要がある。

第2 有機農業の推進及び普及の目標に関する事項
 1 目標の設定の考え方
   農業者が容易に有機農業に従事できるようにすること、農業者その他の関係者が有機農業に
  よる農産物の生産、流通又は販売に積極的に取り組めるようにすることなど、有機農業推進法に
  定める基本理念に即し、有機農業の推進及び普及に当たっての国、地方公共団体、農業者その
  他の関係者及び消費者の共通の目標を掲げることとする。
   特に、現状では、有機農業に関する技術体系の確立とともに、国及び地方公共団体における有
  機農業の推進に向けた体制の整備等が重要な課題であることを考慮し、こうした農業者が有機
  農業に積極的に取り組めるようにするための条件整備に重点を置いて目標を設定するものとす
  る。

 2 有機農業の推進及び普及の目標
  (1)有機農業に関する技術の開発・体系化
    有機農業に農業者が容易に従事できるようにするためには、現状では、病害虫等による品質
   や収量の低下が起こりやすいなどの課題を有する有機農業について、こうした課題を克服した
   技術を確立することが重要である。
    このため、おおむね平成23年度までに、試験研究独立行政法人、都道府県、大学、有機農
   業者、民間団体等で開発され、実践されている様々な技術を適切に組み合わせること等によ
   り、安定的に品質・収量を確保できる有機農業の技術体系の確立を目指す。

  (2)有機農業に関する普及指導の強化
    農業者等が有機農業に取り組めるようにするためには、地域で有機農業に関する技術及び知
   識の指導を受けることができる環境を整えていくことが重要である。
    このため、おおむね平成23年度までに、国や都道府県の研修を活用するとともに、先進的な
   有機農業者との連携を強化しつつ、意欲的な農業者への支援を行うことができるよう都道府県
   の普及指導センターや試験研究機関等に普及指導員を配置するなど、普及指導員による有機
   農業の指導体制を整備した都道府県の割合を100%とすることを目指す。

  (3)有機農業に対する消費者の理解の増進
    有機農業については、消費者の理解と協力を得ながら推進することが重要であるが、有機農
   業に対する消費者の理解は未だ十分でない。
    このため、有機農業に対する消費者の理解の増進を目標とする。具体的には、モニター調査
   等を通じて把握する、有機農業が化学肥料及び農薬を使用しないこと等を基本とする環境と調
   和の取れた農業であることを知る消費者の割合について、おおむね平成23年度までに50%
   以上とすることを目指す。
  (4)都道府県における推進計画の策定と有機農業の推進体制の強化
    現状では未だ取組の少ない有機農業を推進及び普及するためには、全国各地において、そ
   れぞれ農業者その他の関係者及び消費者の理解と協力を得ながら基本方針に基づく取組を進
   める必要がある。また、有機農業推進法第7条第1項において、都道府県は、基本方針に即し
   て有機農業の推進に関する施策についての計画(以下「推進計画」という。)を定めるよう努め
   ることとされている。
    このため、推進計画を策定・実施している都道府県の割合をおおむね平成23年度までに10
   0%とすることを目指す。
    併せて、全国各地において基本方針、推進計画に基づく取組を進めるため、有機農業者や有
   機農業の推進に取り組む民間の団体等を始め、流通業者、販売業者、実需者、消費者、行政
   部局、農業団体等で構成する有機農業の推進を目的とする体制が整備されている都道府県及
   び市町村の割合を、おおむね平成23年度までに都道府県にあっては100%、市町村にあって
   は50%以上とすることを目指す。

第3 有機農業の推進に関する施策に関する事項
 1 有機農業者等の支援
  (1)有機農業の取組に対する支援
    国及び地方公共団体は、有機農業に必要な技術の導入を支援するため、たい肥等の生産・
   流通施設等の共同利用機械・施設の整備の支援に努めるとともに、持続性の高い農業生産方
   式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)第4条第1項の規定に基づく持続性
   の高い農業生産方式の導入に関する計画(以下「導入計画」という。)の策定を有機農業者等に
   積極的に働きかけ、導入計画の策定及び実施に必要な指導及び助言、特例措置を伴う農業改
   良資金の貸付け等による支援に努める。
    また、平成19年度から実施する農地・水・環境保全向上対策を活用し、有機農業を含む環境
   負荷を大幅に低減する地域でまとまった先進的な取組に対して、当該取組を行う農業者にも配
   分可能な交付金等を交付することにより、有機農業者の支援に努める。
    さらに、有機農業による地域農業の振興を全国に展開していくため、国は、そのモデルとなり
   得る有機農業を核とした地域振興計画を策定した地域に対し、当該地域振興計画の達成に必
   要な支援を行うとともに、有機農業者、地方公共団体、農業団体、有機農業の推進に取り組む
   民間の団体等の協力を得て、地域における有機農業に関する技術の実証及び習得の支援を
   行う。
  (2)新たに有機農業を行おうとする者の支援
    国及び地方公共団体は、関係団体と連携・協力して、有機農業を行おうとする新規就農希望
   者が円滑に就農できるよう、全国及び都道府県における就農相談、道府県農業大学校や就農
   準備校、有機農業の推進に取り組む民間の団体等における研修教育の推進、就農支援資金
   の貸付けによる支援等に努める。
    また、有機農業を行おうとする新規就農希望者に対して適切な指導及び助言が行われるよ
   う、国及び都道府県は、有機農業者や有機農業の推進に取り組む民間の団体等と連携・協力
   して、国、地方公共団体及び農業団体の職員等を対象に、必要な情報の提供を行うとともに、
   有機農業の意義や実態、有機農業の取組を支援できる各種施策に関する知識、有機農業に関
   する技術等を習得させるための研修の実施に努める。
  (3)有機農業により生産される農産物の流通・販売面の支援
    国及び地方公共団体は、農業団体等と連携・協力して、有機農業により生産される農産物に
   ついて、その特色を活かした販売や消費者・実需者のニーズを反映した生産を実現するため、
   有機農業者に対し、JAS法に基づく有機農産物の日本農林規格(平成17年10月27日農林
   水産省告示第1605号)や生産情報公表農産物の日本農林規格(平成17年6月30日農林水
   産省告示第1163号)等の活用、農産物の生産・出荷情報を流通業者、販売業者、実需者及
   び消費者に広く提供するネットカタログ等を利用した情報の受発信を積極的に働きかける。
    また、直売施設やインターネットを利用した販売活動等に取り組む有機農業者に対し、消費者
   や実需者との情報の受発信を積極的に働きかける。
    さらに、農産物直売施設等の整備の支援に努めるとともに、相当程度の量でまとまって有機
   農業により生産される農産物を確保できる場合は、関係団体と連携・協力して、流通業者、販
   売業者又は食品製造業者や外食業者等の実需者と、有機農業者、農業団体等との意見交換
   や商談の場の設定、卸売市場流通における第三者販売や直荷引きの仕組みの適用等を通じ、
   有機農業者や農業団体等と、流通業者、販売業者や実需者との橋渡しに努める。

 2 技術開発等の促進
  (1)有機農業に関する技術の研究開発の促進
    国及び都道府県は協力して、有機農業者を始め民間の団体等で開発、実践されている様々
   な技術を探索するとともに、これらの技術を適切に組み合わせること等により、品質や収量を安
   定的に確保できる有機農業の技術体系を確立するため、当該技術の導入効果、適用条件を把
   握するための実証試験等に取り組むよう努める。
    また、国は、有機農業の実態を踏まえ、既に取り組まれている有機農業に関する技術の科学
   的な解明や、これらを普及するために必要な技術の開発など、有機農業の推進に必要な研究
   課題を設定するとともに、研究開発の実施に当たっては、試験研究独立行政法人を始め、都道
   府県、大学、民間の試験研究機関、行政部局、有機農業者等の参画を得て、有機農業に関す
   る研究開発の計画的かつ効果的な推進に努める。
    地方公共団体においては、その立地条件に適応した有機農業に関する技術の研究開発、他
   の研究機関等が開発した技術を含む新たな技術を地域の農業生産の現場に適用するために
   必要な実証試験等に取り組むよう努める。
  (2)研究開発の成果の普及の促進
    国及び地方公共団体は、有機農業に関する有用な技術の研究開発の成果を普及するため、
   研究開発の成果に関する情報の提供に努めるとともに、都道府県の普及指導センターを中心
   に、地域の実情に応じ、市町村、農業団体等の地域の関係機関や、有機農業者、民間の団体
   等と連携・協力して、農業者への研究開発の成果の普及に努める。
    また、有機農業者及び今後、有機農業を行おうとする者に対し、新たな研究開発の成果、知
   見に基づく効果的な指導及び助言が行われるよう、国及び都道府県は、有機農業者の協力を
   得て、普及指導員等に対する有機農業に関する研究開発の成果等に係る技術及び知識を習
   得させるための研修の内容、情報提供の充実を図るとともに、有機農業者等の技術に対するニ
   ーズを的確に把握し、それを試験研究機関における研究開発に反映させるよう努める。

 3 消費者の理解と関心の増進
   国及び地方公共団体は、有機農業に対する消費者の理解と関心を増進するため、有機農業者
  と消費者との連携を基本としつつ、インターネットの活用やシンポジウムの開催による情報の受
  発信、資料の提供、優良な取組を行った有機農業者の顕彰等を通じて消費者を始め、流通業
  者、販売業者、実需者、学校関係者等に対し、自然循環機能の増進、環境への負荷の低減、生
  物多様性の保全など、有機農業の有する様々な機能についての知識の普及啓発並びに有機農
  業による農産物の生産、流通、販売及び消費に関する情報の提供に努める。
   また、民間の団体等による消費者の理解と関心を増進するための自主的な活動を促進するた
  め、これらの者による優良な取組についての顕彰及び情報の発信に取り組むとともに、消費者に
  対するJAS法に基づく有機農産物等の表示ルール・検査認証制度の普及啓発に努める。

 4 有機農業者と消費者の相互理解の増進
   国及び地方公共団体は、有機農業者と消費者の相互理解の増進を図るため、食育や地産地
  消、農業体験学習、都市農村交流等の活動と連携して、地域の消費者や児童・生徒、都市住民
  等が地域の豊かな自然環境の下で営まれる有機農業に対する理解を深める取組の推進に努め
  る。
   また、民間の団体等による有機農業者と消費者の相互理解を増進するための自主的な活動を
  促進するため、これらの者による優良な取組についての顕彰及び情報の発信に努める。

 5 調査の実施
   国は、有機農業により生産される農産物の生産、流通、販売及び消費の動向等の基礎的な情
  報、有機農業に関する技術の開発・普及の動向、地域の農業との連携を含む有機農業に関する
  取組事例その他の有機農業の推進のために必要な情報を把握するため、地方公共団体、有機
  農業により生産される農産物の生産、流通又は販売に関する団体その他の有機農業の推進に
  取り組む民間の団体等の協力を得て、必要な調査を実施する。

 6 国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援
   国及び地方公共団体は、有機農業の推進のための活動に自主的に取り組む民間の団体等に
  対し、情報の提供、指導及び助言その他の必要な支援を行うとともに、これらの者と連携・協力し
  て有機農業の推進のための活動を効果的に展開できるよう、相談窓口を設置するなどの所要の
  体制の整備に努める。
   また、これらの民間の団体等による自主的な活動を促進するため、優良な取組の顕彰及び情
  報の発信に努める。

 7 国の地方公共団体に対する援助
   国は、都道府県に対し、基本方針、当該都道府県における有機農業の実態等を踏まえて定め
  る有機農業の推進の方針、当該方針に基づきおおむね5年の間に実施する施策、有機農業を推
  進するに当たっての関係機関・団体等との連携・協力、有機農業者等の意見の反映、推進状況
  の把握及び評価の方法を内容とする推進計画の策定を積極的に働きかけるともに、その策定に
  必要な情報の提供、指導及び助言に努める。
   また、地方公共団体が行う有機農業の推進に関する施策の策定及び実施に関し、必要な指導
  及び助言を行うとともに、地方公共団体の職員が有機農業の意義や実態、有機農業の推進に関
  する施策の体系、先進的な取組事例等有機農業に関する総合的な知識を習得できる研修の実
  施に努める。

第4 その他有機農業の推進に関し必要な事項
 1 関係機関・団体との連携・協力体制の整備
  (1)国及び地方公共団体における組織内の連携体制の整備
    有機農業の推進に関する施策は、有機農業による農産物の生産、流通、販売及び消費の各
   側面から有機農業の推進のために必要な施策を総合的に講じることとされている。これらの施
   策を計画的かつ一体的に推進し、施策の効果を高めるため、国は、これらの施策を担当する部
   局間の連携を確保する体制の整備に努める。
    また、地方公共団体に対し、同様の体制を整備するよう働きかける。
  (2)有機農業の推進体制の整備
    有機農業の推進に当たっては、農業者その他の関係者及び消費者の理解と協力を得るとと
   もに、有機農業者や民間の団体等が自主的に有機農業の推進のための活動を展開している
   中で、これらの者と積極的に連携する取組が重要である。
    このため、国は、全国、地方ブロックの各段階において有機農業者や有機農業の推進に自主
   的に取り組む民間の団体等を始め、流通業者、販売業者、実需者、消費者、行政部局及び農
   業団体等で構成する有機農業の推進体制を整備し、これらの者と連携・協力して、有機農業の
   推進に取り組むよう努める。
    また、地方公共団体に対し、同様の体制を整備するよう働きかける。
  (3)有機農業に関する技術の研究開発の推進体制の整備
    有機農業に関する技術の研究開発については、試験研究独立行政法人、都道府県の試験研
   究機関に加え、有機農業者を始めとする民間の団体等においても自主的な活動が展開されて
   おり、これらの民間の団体等と積極的に連携・協力することにより、技術の開発が効果的に行わ
   れることが期待できる。
    このため、国は、全国、地方ブロックの各段階において、試験研究機関のほか、行政・普及担
   当部局、有機農業者、農業団体等の参画を得て、研究開発の計画的かつ効果的な推進のため
   の意見交換、共同研究等の場の設定を図るとともに、関係する研究開発の進捗状況を一元的
   に把握するよう努める。
    また、地方公共団体に対し、同様の体制を整備するよう働きかける。

 2 有機農業者等の意見の反映
   国及び地方公共団体は、有機農業の推進に関する施策の策定に当たっては、意見公募手続の
  実施、現地調査、有機農業者等との意見交換その他の方法により、有機農業者その他の関係者
  及び消費者の当該施策についての意見や考え方を積極的に把握し、これらを当該施策に反映さ
  せるよう努める。
   また、国は、有機農業による農産物の生産、流通、販売及び消費の動向を常に把握し、その進
  捗状況に応じた施策等の検討を行う体制を整備するとともに、地方公共団体に対し、同様の体制
  を整備するよう働きかける。

 3 基本方針の見直し
   この基本方針は、有機農業推進法で示された基本理念及び有機農業の推進に関する施策の
  基本となる事項に従い、基本方針の策定時点での諸情勢に対応して策定したものである。
   しかしながら、今後、有機農業を含めた農業を取り巻く情勢も大きく変わることが十分考えられ
  る。また、目標の達成状況や施策の推進状況等によっても、基本方針の見直しが必要となる場
  合が考えられる。
   このため、この基本方針については、平成19年度からおおむね5年間を対象として定めるもの
  とするが、見直しの必要性や時期等を適時適切に検討することとする。

             有機農業の推進に関する法律

平成18年法律第112号

 (目的)
第1条 この法律は、有機農業の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責
 務を明らかにするとともに、有機農業の推進に関する施策の基本となる事項を定めることによ
 り、有機農業の推進に関する施策を総合的に講じ、もって有機農業の発展を図ることを目的と
 する。
 (定義)
第2条 この法律において「有機農業」とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこ
 と並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷
 をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。
 (基本理念)
第3条 有機農業の推進は、農業の持続的な発展及び環境と調和のとれた農業生産の確保が重要
 であり、有機農業が農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質
 の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。)を大きく増進し、かつ、農業生産に由
 来する環境への負荷を低減するものであることにかんがみ、農業者が容易にこれに従事するこ
 とができるようにすることを旨として、行われなければならない。
 2 有機農業の推進は、消費者の食料に対する需要が高度化し、かつ、多様化する中で、消費
 者の安全かつ良質な農産物に対する需要が増大していることを踏まえ、有機農業がこのような
 需要に対応した農産物の供給に資するものであることにかんがみ、農業者その他の関係者が積
 極的に有機農業により生産される農産物の生産、流通又は販売に取り組むことができるように
 するとともに、消費者が容易に有機農業により生産される農産物を入手できるようにすること
 を旨として、行われなければならない。
 3 有機農業の推進は、消費者の有機農業及び有機農業により生産される農産物に対する理解
 の増進が重要であることにかんがみ、有機農業を行う農業者(以下「有機農業者」という。)
 その他の関係者と消費者との連携の促進を図りながら行われなければならない。
 4 有機農業の推進は、農業者その他の関係者の自主性を尊重しつつ、行われなければならな
 い。
 (国及び地方公共団体の責務)
第4条 国及び地方公共団体は、前条に定める基本理念にのっとり、有機農業の推進に関する施
 策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
 2 国及び地方公共団体は、農業者その他の関係者及び消費者の協力を得つつ有機農業を推進
 するものとする。
 (法制上の措置等)
第5条 政府は、有機農業の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置そ
 の他の措置を講じなければならない。
 (基本方針)
第6条 農林水産大臣は、有機農業の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)
 を定めるものとする。
 2 基本方針においては、次の事項を定めるものとする。
  一 有機農業の推進に関する基本的な事項
  二 有機農業の推進及び普及の目標に関する事項
  三 有機農業の推進に関する施策に関する事項
  四 その他有機農業の推進に関し必要な事項
 3 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の
 長に協議するとともに、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
 4 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表し
 なければならない。
 (推進計画)
第7条 都道府県は、基本方針に即し、有機農業の推進に関する施策についての計画(次項にお
 いて「推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。
 2 都道府県は、推進計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなけ
 ればならない。
 (有機農業者等の支援)
第8条 国及び地方公共団体は、有機農業者及び有機農業を行おうとする者の支援のために必要
 な施策を講ずるものとする。
 (技術開発等の促進)
第9条 国及び地方公共団体は、有機農業に関する技術の研究開発及びその成果の普及を促進す
 るため、研究施設の整備、研究開発の成果に関する普及指導及び情報の提供その他の必要な施
 策を講ずるものとする。
 (消費者の理解と関心の増進)
第10条 国及び地方公共団体は、有機農業に関する知識の普及及び啓発のための広報活動その
 他の消費者の有機農業に対する理解と関心を深めるために必要な施策を講ずるものとする。
 (有機農業者と消費者の相互理解の増進)
第11条 国及び地方公共団体は、有機農業者消費者の相互理解の増進のため、有機農業者と消
 費者との交流の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
 (調査の実施)
第12条 国及び地方公共団体は、有機農業の推進に関し必要な調査を実施するものとする。
 (国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援)
第13条 国及び地方公共団体は、国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための
 活動の支援のために必要な施策を講ずるものとする。
 (国の地方公共団体に対する援助)
第14条 国は、地方公共団体が行う有機農業の推進に関する施策に関し、必要な指導、助言そ
 の他の援助をすることができる。
 (有機農業者等の意見の反映)
第15条 国及び地方公共団体は、有機農業の推進に関する施策の策定に当たっては、有機農業
 者その他の関係者及び消費者に対する当該施策について意見を述べる機会の付与その他当該施
 策にこれらの者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

附則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
 (食料・農業・農村基本法の一部改正)
2 食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)の一部を次のように改正する。
  第40条第3項中「及び食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第
 116号)」を「、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116
 号)及び有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)」に改める。
 (農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部改正)
3 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成18年法律第88
 号)の一部を次のように改正する。
 附則第9条中第40条第3項の改正規定を次のように改める。
 第40条第3項中「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116
 号)」の下に「、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成1
 8年法律第88号)」を加える。

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