JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 足立区都市農業公園だより(3)
       ―有機農業サポート室活動レポート―
 『鳥や虫たちとの攻防戦はネバー・ギブ・アップ』

有機農業サポート室指導員  明石 誠一

親子で稲刈り

親子で稲刈り

 八月から九月は夏野菜が徐々に終わり、秋冬野菜へと模様替えする時期となりました。今年の気候はまさに天変地異。暑く雨の無い夏から、ゲップが出るほどの雨をもらった台風の秋。ここ都市農業公園(以降、略して都市農)の畑もその影響を例外なく受けました。

 防鳥ネットの中はパラダイス?

 都市農は足立区内にあり、そこはまさに東京の真っ只中。そんな所に田んぼや畑があるわけです。都市農の田んぼにはもち米を植えました。八月も終わりになると、田んぼの稲たちも穂を出し、次第に頭を垂れだしてきます。穂の中には乳液状のものがあり、実が入りだします。

 「あー、これが美味しいもち米になるのかぁ」と、私たちは楽しみにしていました。ところが、私たち人間以上にこれが大好物な奴がいました。スズメや鳩たちです。コンクリートジャングルに突然あらわれた稲穂は、鳥たちにとったら、たまらないご馳走だったに違いありません。田んぼが見える木の上や高速道路の下から、やつらは狙っていました。夕方になると人間たちは仕事の後片付けをし、畑から姿を見せなくなります。すると、それ今だーと、彼らは群れをなしていっせいに舞い降り、美味しい稲をむさぼります。私は「クゥオラー!!」と叫び、手を叩き追い返しますが、それも一時しのぎ。私たちが居ない時には、思う存分食べているに違いありません。

防鳥ネットで囲まれた田んぼ

防鳥ネットで囲まれた田んぼ

 私たちも指をくわえているわけにはいきません。もしもまわりが田んぼだらけで、一部鳥に食べられたと言うのなら自然への恩返しとして許せますが、ここは都会の中にぽつんとあらわれた有機無農薬もち米地帯です。鳥たちのやる気には殺気立つものがありました。そこで私たちはまず、キラキラ光る防鳥テープで対抗しました。が、この防鳥テープはいい止まり木になっていたようです。これは本格的にまずいと言う事で、都市農の方たちが中心となり、防鳥ネットで田んぼをすっぽり囲ってしまうことになりました。田んぼの周りに杭を打ち、竹で柵を作り、ネットをかけていきました。

夏やさい。ピーマンとナス

夏やさい(ピーマン・ナス)

 人が作業しているその目の前で、スズメたちはあざ笑うかのごとく稲をついばんでいます。「クソー」と思いながらも、それで食べおさめと思い作業を続け、ついに田んぼはネットですっぽりと覆われました。もうスズメも入ることは出来ません。あくる日一羽のスズメがネットの中に入っていました。どこからか上手く入り込んだのでしょう。人間が近づくと逃げようとして、ネットに体当たりしています。かわいそうでしたが何もして上げられないので、そのままにしました。私はこう思いました。スズメは逃げようとしなければ、そこはパラダイスだなぁと。

 片方にはキュウリ、インゲン、ニガウリが、もう片方にはミニカボチャ、へちま、そして大和芋が植えられました。その下、つまりはハウスの中にはスイカ、マクワウリ、胡麻、花ナスが植えられました。夏の盛りにはキュウリ、ニガウリ、ミニカボチャがたくさんぶら下がり、今ではヘチマがたくさんなっています。インゲンは、肥やしが強かったのか、アブラムシにやられてしまいました。ニガウリ、ヘチマと、大和芋は蔓がよくしげり、気持ちのいい木陰(蔓陰?)が出来ています。

 カメラを持ってきたお客さんの多くが、このぶら下がった野菜たちを被写体に撮っているようでした。ハウスの屋根からニガウリやヘチマ、ミニカボチャが垂れている景色はなかなか楽しいです。気が付くとポッカーンと口を開けながら見ていますよ。

 夢にまで芯食い虫

大根の種まき

大根播種

 九月に入り、トマト、キュウリ、スイカ、カボチャ、小豆、ニガウリなど夏野菜の片付けが始まり、その後に、秋冬野菜のコマツナ、春菊、大根、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、白菜などを作付けていきます。

 今年の夏は異常な雨不足に高温でした。お彼岸も過ぎれば、過ごしやすくなるだろうと思っていました。

 しかし、小松菜は蒔けども蒔けども育ちません。そして定植したキャベツの苗すべてに芯食い虫(野菜の出てきたばかりの芯の部分を植害する)が付き、かなりの芯がもうすでに食われていました。このため魚住さんのキャベツ苗を、三〇〇苗ほど持って来て補植しました。キャベツはもちろんのこと、大根や白菜にもその被害は広がっていきます。大根にいたっては、半分以上がものにならなかったため、再度蒔きなおしました。

大根の発芽

大根発芽

 こうして芯食い虫との戦いが始まりました。つま楊枝がその戦闘態勢です。一株に五、六匹付いていることは普通です。本当に今出たばかりというくらい小さな新芽にも、つまよう枝の先ほどの小さな小さな芯食い虫が付いています。虫眼鏡で見ないと分からないほどです。これをすべて取り除くのは気の遠くなる作業です。また取りきれているのか、意味があるのか、いつまで続くのかという不安や、薬を使えば楽にすぐ解決できるのに…というイライラがありました。でも、何を言われようともやるしかないのです。人手もあって、やれば助かる可能性がある限り、諦めてはいけません。

つま楊枝を武器に、芯食い虫取り

芯食い虫取り。武器はつま楊枝

 農薬には使用時に安全と言われる許容範囲というのがあります。ヒト(健康な成人男性)が一生食べても影響がないというのがその許容範囲です。私はこの世の中、成人男性だけではないと思うし、いくら微量でも薬がかかった虫を何十匹と食べるクモや、蜂(ここで薬の濃度が何十倍にもなる)もいてそれを何十匹と食べる鳥(ここで薬の濃度は何百倍にもなる)もいます。そうしているうちに薬の濃度は私たち人間が食べる頃には何千倍、何万倍にもなっています。薬は雨水を介して川や海に溶け込んで行きますので、魚にも同様の影響があるのではないかと思います。

白菜の定植

白菜の潅水と定植

 私たちはヒト科の生き物だけで生きているのではありません、地球上の生き物たちと共に生きているのです。人を刺す危険のある蜂は、野菜の受粉の手伝いをしてくれています。蜂の生態をよく調べもしないで、ただ危険だというだけで殺し、野菜の受粉が上手くいかないとホルモン剤を使うのでは、結局不効率です。もっと自然の循環を勉強しなくてはいけません(もちろん私も)。

 そんな気持ちで、ずーっと芯食い虫を取り続けました。夢にも芯食い虫は出てきました。本当に大変でしたが、それに野菜も答えてくれます。

刈り取って干した稲

刈りとった稲

 また、つい先日都市農で行われた収穫祭(この模様は、次回お伝え致します)に来られていたお客さんの中に、以前私たちが虫取りをしている姿を見て、がんばっているなぁと思い、今回の掘り取り体験に参加してくれた方がいました。そのために一時間以上も並んで待って下さっていました。それを聞いた時、私たちも丹精こめて作った野菜を、こんなに並んで買って下さり本当に有り難いと思いました。これが何よりのやりがいになりますよね。

 自然環境は日々めまぐるしく変化しています。でもそれは私たちに対する警告にも取れます。今年は、大変な年ですが、起こってしまった事は受け入れ、そして諦めないようにと思っています。

足立区都市農業公園
【場所】 東京都足立区鹿浜2‐44‐1
【交通】 東武伊勢崎線西新井駅から都市農業公園行き(東武バス)終点(都市農業公園)下車
【開園時間】 午前9時〜午後5時
【休園日】 12月28日〜翌年1月4日まで。公園管理のため前記以外に閉園することがあります。
【TEL】 03‐3853‐4114

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