JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 足立区都市農業公園だより(2)
       ―有機農業サポート室活動レポート―
 『有機で豊かな環境を』

有機農業サポート室指導員  明石 誠一

公園を訪れた保育園児

「あれ、なぁに」

 今年の四月から、日本有機農業研究会有機農業サポート委員会から指導作業員として派遣され,足立区都市農業公園(東京)の畑と田んぼを有機栽培に転換するお手伝いをすることになりました。理事の魚住道郎さんが中心となり、同じく指導作業員の梅原美奈さんとの三人で働いています。私は現在,埼玉県の富士見市と三芳町あたりで農薬不使用の野菜を栽培しています。実家の東京都板橋区からの通い農民です。

 カルガモ親子現る

 都市農には池があります。その池の水をポンプで上げて、田んぼに入れたり、黒鳥や、鯉が飼われたりしています。その池になんとコガモを一〇羽も引き連れたカルガモの親子が現れたのです。

 私はテレビでしか見たことがなかったので、まさかここで生カルガモ親子を見られるとは思ってもいませんでした。ホントにかわいかったですね。ただ、そこで飼われていた一羽の黒鳥(文字通り白鳥を黒くした姿をしている)にとっては縄張りを荒らす侵入者だったようです。執拗にカルガモの親鳥を威嚇していました。

 コガモは親鳥と離れ離れになってしまい、みんなちりじりになっていました。その隙を狙って、カラスなどの天敵が襲ってきたのではないでしょうか? 一〇羽いたコガモが、六羽になり、四羽になり、とうとう最後の一羽になってしまいました。そして残念ながら最後のコガモもいなくなり、親鳥もいつのまにか池からいなくなっていました。これが自然なのでしょうね。

 カルガモにとっては大変な環境でしたが、カルガモが子育ての場に選んでくれたことが私たちにとってすごくうれしい出来事でした。

 銀ヤンマに夢中

ギンヤンマの産卵

ギンヤンマの産卵

 お昼休みが終わり、午後の作業が始まる頃でした。都市農の田んぼに銀ヤンマが交尾、産卵にやって来ていました。大変珍しいトンボだったのですね。これを見つけるや否や、指導員の魚住道郎さんの目の色が変わりました。少年のそれに変わったのです。

 「カメラ持って来て! あー、あと長靴!」。カメラを手にした魚住さんは「銀ヤンマはどこ行ったぁ!?」。持ってきた長靴をはくのも忘れて、帽子のつばを後ろに回し、カメラをできるだけ銀ヤンマに近づけることに全神経を注ぎ、シャッターをきり続けていました。

 「すごいよ、こんな近くで銀ヤンマが見られて」「いやー感動! 感動だよ!」

 私は別の意味で魚住さんに感動でした。こんなに好きなことに夢中になれる魚住さんがうらやましく、魅力的でした。指導作業員の梅原美奈さんと目を合わせて笑ってしまいました。

 後日、そこで撮った銀ヤンマの写真は大きく引き伸ばされていました。よく撮れていましたよ。

 寒冷紗の中で、イソシギが出産

 蒔いておいた落花生の発芽がまばらで、あまり揃いませんでした。そこで追い蒔きをして、鳥に食べられないようにと、トンネルにして寒冷紗をかけておきました。これで完璧と安心していましたが、なかなか発芽してきません。おかしいなぁ、種が腐ったのかなぁと思っていました。

 そんなある日の朝、「ピヨ、ピヨ、ピィー、ピィー」とかわいい泣き声が、聞こえてきました。泣き声からすると一羽ではありません。巣の中で子鳥たちが鳴いている感じです。初めはどこから泣き声がするのか分かりませんでした。

 どこかに巣があるのだろうと思い辺りを見回しても、声がする辺りに巣がありそうな木は一本も生えていません。地形のせいで音がどこからか反響しているのかとも思いました。それにしては、近くから聞こえてきます。音を頼りに良く探してみると、なんと落花生にかけておいた寒冷紗の中に鳥が子どもを産んでいたのです。声の主はこの子鳥たちだったのです。(写真上・左)

 寒冷紗の中は害敵が襲って来ないし、食料となる落花生がたくさんあります。絶好の子育て場所ですよね。いい場所を良く見つけたなぁと、親鳥(写真上の右)に感心。

 都会の中にあって、いろんな生き物がここに集まってくるのが嬉しかったですね。

 食べられたであろう落花生は……仕方ないですよね。後から落花生が生えなかった所に、大豆を蒔きました。自然環境館の方に鳥の名前を聞くと「この鳥はイソシギと言う鳥ですね」と言うことでした。

 野菜ハウス

野菜ハウスのヘチマ

野菜ハウスのヘチマ

 都市農には野菜ハウスがあります。ハウスの中に野菜があるのではありません。ビニールハウスの、ビニールの部分が野菜になっているのです。魚住さんのアイデアで、ハウスの骨組みにキュウリ用ネットを張り、そこに野菜を這わせようというのです。つまり、野菜のトンネルが出来上がるわけです。

 片方にはキュウリ、インゲン、ニガウリが、もう片方にはミニカボチャ、へちま、そして大和芋が植えられました。その下、つまりはハウスの中にはスイカ、マクワウリ、胡麻、花ナスが植えられました。夏の盛りにはキュウリ、ニガウリ、ミニカボチャがたくさんぶら下がり、今ではヘチマがたくさんなっています。インゲンは、肥やしが強かったのか、アブラムシにやられてしまいました。ニガウリ、ヘチマと、大和芋は蔓がよくしげり、気持ちのいい木陰(蔓陰?)が出来ています。

 カメラを持ってきたお客さんの多くが、このぶら下がった野菜たちを被写体に撮っているようでした。ハウスの屋根からニガウリやヘチマ、ミニカボチャが垂れている景色はなかなか楽しいです。気が付くとポッカーンと口を開けながら見ていますよ。

ヘチマの花と実

ヘチマの花と実

ウサギ様

 今年の夏は暑かった。かわいそうなことに、都市農のウサギたちもこの暑さで弱ってしまいました。そこでウサギたちをクーラー完備の部屋に移したのでした。すると今までの夏バテ振りはどこへやら、仕切りの板を飛び越えそうなくらい、元気一杯に飛び跳ねています。食欲も旺盛。体もコロコロしてきたようです。
 人間は炎天下で畑仕事、ウサギ様はクーラー完備。これがみんなの心に引っかかっていました(もちろん私も含めて)。この話をする時は、決まって愚痴っぽくなります。「いいなぁ、あいつらは」。もうウサギも「あいつら」呼ばわりでした。

 散水ホース大活躍

トマト畑

生き返ったトマト

 今年の暑さは、野菜に大ダメージでした。毎日のように、ホースによる水やりが続いていましたが、ある日魚住さんは散水ホースを持って来ました。この散水ホースには小さな穴が開いていて、そこから水が霧のように吹き上がる仕組みになっているのです。

 このホースを畑中にめぐらし、水道からホースを伸ばし散水ホースに取り付け蛇口をひねっておけば、野菜の葉を潤し、土にゆっくりとしみていきます。乾燥対策で草マルチをしておいた里芋、ショウガ、ナス、ピーマン、トマト、キュウリたちは、このホースのおかげで見違えるように元気になり、そして心配されていたニンジンの発芽もスムーズにいきました。

 労力と、時間が大幅に省略されたので大助かりでした。今後も強い見方になること間違いなしです。

 綿糸に気を付けて

 大豆を蒔き、それが発芽した所は、ハトにとってこの上ないご馳走なのでしょう。都市農の周りにはハトがたくさんいます。だから大豆を蒔いた後は、ハト対策として綿の糸を張り巡らし、それに加えてカカシも作っておきました。

 綿の糸を張れば後片付けが楽で、仮に畑に残っても自然の素材なので心配ありません。ただ……黒の糸はなかなか見づらいものです。張っている最中にも、引っ掛けて切れてしまいます。切れた糸を張りなおしている最中にもまた切れてしまいます。これは気を付けて歩かないとまた切れるぞ……。次第におかしな歩き方になっていきます。

大豆の種まき

綿糸に気を付けて大豆を播く

 足元は大豆を踏まないようにガニ股の大股、姿勢は低く、腰をかがめて、手は暗闇の中を手探りするように歩いて行きます。まるで、有名な絵画を盗もうと、怪盗ルパンがレーザー光線をよけて歩いているみたいでした。糸の効果はありましたが、切れたとこからハトが進入して食べていたようです。

 そしてカカシの効果は、おもしろい結果が現れていました。大豆が食べられた所には追い蒔きをしておいたのですが、カカシの周りは、追い播きした大豆も食べられていたのです。

 たまたまかもしれませんが、私はこう思いました。ここのハトは、人は餌をくれると思っている。実際ハトに餌をやっている方はいるので、ハトたちはカカシが餌をくれたのだと思ったのですかね。


 夏が終わりあっという間に秋がやってきています。都市農業公園の畑も徐々に、秋冬野菜に模様替えしています。田んぼも収穫の時期を迎えてきます。今度はどんな出来事が待っているのか、収穫祭や、稲刈り体験教室が楽しみです。

足立区都市農業公園
【場所】 東京都足立区鹿浜2‐44‐1
【交通】 東武伊勢崎線西新井駅から都市農業公園行き(東武バス)終点(都市農業公園)下車
【開園時間】 午前9時〜午後5時
【休園日】 12月28日〜翌年1月4日まで。公園管理のため前記以外に閉園することがあります。
【TEL】 03‐3853‐4114

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