JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

北海道は、今まさに試されている!
―「GMイネの試験栽培」から「規制条例」上程までの経緯―

日本有機農業研究会 『土と健康』 05年3月号 北海道有機農業研究会事務局長 石塚 おさむ

「原則禁止」から突如「推進色の濃い規制案」へ

 事の発端は、2003年5月に北海道農業研究センター(北農研センター)が、札幌市内にある同センター敷地内の開放系水田でGM(遺伝子組み換え)イネを試験栽培すると発表したことだ。発表といっても区役所内に簡単なちらしを置いて、マスコミ各社に通知しただけ。それでも、北農研センターが田植え直前に行った説明会(5/20)には、これを危惧する市民や農家が押し掛け、騒然となった。

 田植えを遅らせて再び説明会(5/29)を開いたものの、北農研センター側と市民側とは平行線のまま、田植えは当初予定より4日遅れて断行された(5/30)。

 北海道有機農業研究会では、北農研センターでの試験栽培中止を求める(6月)とともに、道に対しては「GM作物の開放系での栽培を規制する条例」制定を求めた(9月)。道は、道民の強い不安の声を後ろ楯に、一般であれ試験であれGM栽培を規制すると公式に言明(12月)。条例ができあがるまでの当面の措置として議会議決を必要としないガイドラインの策定に入った。

 しかし、経済界や推進の研究者、農水省の研究部門からの強烈な圧力があり、最終的にはGM推進をにじませる矛盾に満ちた内容となり、なおかつ「試験研究については別途検討する」という文言が入ったガイドラインが出来上がった(2004年3月)。

 この後、その別途検討することになった試験栽培について話し合う「遺伝子組み換え作物の栽培試験に係る実施条件検討会」(検討会)が立ち上がることになった。4月には、私に対し委員就任の要請があった。その際見せられた委員11名の構成はアンバランスなものだった。GM推進の研究者だけでなく、当初委員候補には上がっていなかった経済界からの代表が2人も入っていた。私は委員を引き受ける条件として、GMに批判的な社会科学者を入れることを、具体的な名を挙げて求めた。事務局の担当者は努力したが、結局実現しなかった。

 それでも第1回目(6/1)と第2回目(8/17)の会議では、試験栽培といえども知事の許可を必要とする(つまり原則禁止)という私たちの意見に沿ってまとまりかけていた。経済界からの委員は強く反対したが、研究者委員は許可制でよいという意見だった。

 ところがその後、経済界からの強い要請で道議会自民党議員が議会内外で執拗に動き、道庁内部でも、直接の担当である「農政部」よりも「経済部」の発言力が増すなかで、第3回目(10/18)の議案には突如、「一般栽培は許可制にするものの試験栽培については届け出制とする」と記載され、他の細かい部分もGM推進色に一変した。激しい議論が戦わされたが、結局第4回目(11/17)に「推進色の濃い規制案」で終結した。

市民運動はもっと力をつけて政策をリードしよう

 現在、検討会での結論や他の機関での議論、また道民からの意見をもとに「GM作物の栽培による交雑等防止に関する条例案」が議会に上程され審議されている。道の担当者が言うように、確かに、試験栽培を強く規制するものにしていたら議会を通せないのかもしれない。しかしあまりに、もやもやの残る条例案である。内容云々よりも、検討会という公の場での議論を無視した形で物事が決められたことに、私は落胆している。研究者委員でさえ「唐突な提案に驚いた」と述べていた。当初の、「これまでにない開かれた審議会、実質的な議論ができる審議会を目指したい」という事務局の意気込みも、今はかすんでしまった。

 開放系でのGM栽培のような、環境や命に甚大な取り返しのつかない影響が懸念される問題については特に、政策形成過程の透明性確保が必要だ。また、いわゆる専門家の知識と、いわゆる素人の感覚が上手に融合されることが求められる。これまでも多くの問題で市民の感覚が先行し、研究や行政は後追いしてきたことを忘れてはならない。

 北海道の政策形成は、旧態依然としていることがはっきりした。しかしそれが白日の下に晒されたのは、市民運動が政策形成機関に入り込んでいたからだ。これを契機に市民運動がもっと力を付けて、政策をリードしていけるようにならなければならないと思う。

 北海道GM作物規制条例をどう有効に運用していけるかも市民の力量にかかっている。



 *ガイドライン、検討会議事録、道民意見、条例案は、北海道庁農政部道産食品安全室のホームページで公開されています。

   北海道遺伝子組換え作物の栽培等による交雑等の防止に関する条例案
    http://www.pref.hokkaido.jp/nousei/ns-rtsak/shokuan/gm-joureian.pdf

   遺伝子組換え作物の栽培等に関する条例(仮称)素案に係る道民意見募集結果
    http://www.pref.hokkaido.jp/nousei/ns-rtsak/shokuan/gm-joureiikenkekka.pdf

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