JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 遺伝子組み換え作物“こぼれ種”自生の影響に危機意識ゼロの環境省

日本有機農業研究会 『土と健康』 05年1・2月合併号

作物への交雑は農民の自家採種の権利を侵害する

 生物多様性条約のバイオセイフティに関するカルタヘナ議定書が2003年9月に発効し、日本は遅れて03年11月に締結、翌04年2月に発効させ、国内法も同日施行となっています。

 生物多様性の保全を目的に掲げるこの法律は、遺伝子組み換え生物の移入により生物多様性へのリスクを規制、管理、制御するための措置をとるよう、締約国に求めています。

 輸入国としては最も多くの組み換え作物を認可し、輸入している日本で、荷揚げ埠頭などで組み換え作物のこぼれ種が自生を始めていることが調査でわかりました。カルタヘナ議定書に則って対応を求め、同法を担当する環境省と昨年12月末に交渉を行いました。

 担当者の説明は以下のとおりです。

 カルタヘナ議定書が規制対象とするのは、野生生物への@雑草化 A交雑性 B有害物質生成、の影響についてである。こぼれ種の自生が作物との交雑を引き起こすという懸念については「近縁種へのジーンフロー(遺伝子伝播)は有利な形質の場合広がるが、組み換えの遺伝子の場合、普通消えていく」、「バイオセイフティー議定書の対象は野生生物であって作物ではない」。

 自生問題への危機意識はみられない対応でした。栽培種は農水省の管轄で、農水省は栽培種への交雑はまだ確認されていないという態度です。確認されてからでは手遅れでしょう。自生は交雑の一歩手前にあるということで、自生を防ぐ有効な措置がとれないなら輸入禁止にすべきです。

(安田 節子)


 交雑の可能性が自家採種運動にブレーキ

種苗部 林 重孝

無視できない種苗交換による汚染拡大の危険昨年は菜種の種まきを断念

 国立環境研究所の中嶋信美氏の調査で、国道51号線の成田から佐原にかけて、輸送中のトラックからこぼれたと思われる遺伝子組み換え菜種が自生していることが判明した。また、「ストップ遺伝子組み換え汚染種子ネット」の調査でも全国の港周辺で、遺伝子組み換え菜種が自生していることも明らかになった。

 この問題について昨年12月、環境省自然環境局野生生物課課長補佐の安田直人氏との話し合いを持った。しかし、環境省の管轄範囲は、あくまでも道路や河川敷であって、農地は農水省の範囲、という立場に終始した。

 今回、道路沿いや港周辺から遺伝子組み換えの作物が見つかったことで、われわれが取り組んでいる自家採種運動、特にアブラナ科のアブラナ属については交雑の心配から、種取りをすることが非常に難しくなった(アブラナ科はアブラナ属、ダイコン属、ワサビ属に分けられる)。

 アブラナ科は虫媒花であり、ミツバチが受粉を助けており、その行動範囲は半径2Km、直系4Kmと言われていて、農地の作物が、道端に自生している遺伝子組み換え菜種と交雑して汚染される可能性がある。もしも組み換え遺伝子に汚染された小松菜やチンゲンサイなどアブラナ属を、そうとは知らずに自家採種して、種苗交換会などで種を普及させた場合、さらに組み換え遺伝子を広げることにつながる。つまり被害者が、同時に加害者にもなりうるという危険性をはらんでいる。

 千葉県は、一昨年から菜の花エコプロジェクトを始めた。菜種を作り、油を絞り、それを食べたり、廃食油はせっけんや燃料にしようという循環型運動である。今回の件に関して、千葉県は青森から菜種の種を持ちこむので、遺伝子組み換えが広範囲に広がることがないと説明しているが、いったん作り始めれば、種は自家採種することになるので、青森からとる必要はなく、組み換え遺伝子が広がる可能性は十分にある。

 昨年、私は遺伝子組み換えの菜種が自生していることを知り、菜種の種まきを断念したが、われわれ農民が自家採種をできなくなるのは、権利の侵害であり、絶対に許されることではない。

 今、ほとんどの農家は種子を買っているが、農民の自立という意味では立場が弱い。農民の立場を強くするためにも、自家採種は広げていかなければならない。そういう意味でも、じつに困った問題である。

 外国から輸入される植物と一緒に虫や病原菌が入ってくることは許されず、港や空港で植物防疫が行われている。組み換え遺伝子も、同様に扱われるべきで、国はもっと厳しく管理するべきである。

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