JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 国産大豆を守り、GM大豆の商業生産にストップを!

日本有機農業研究会 『土と健康』 04年11月合併号 科学部 安田 節子

北海道で密かに栽培・出荷されていたGM大豆

 GM大豆はバイオ作物懇話会(代表 長友勝利氏)が試験栽培を各地で行いましたが、地元の反対運動で、すべて中止させてきました。
 しかし、新たな動きとして、10月始め、北海道夕張郡長沼町の西南農場(宮井能雅氏)が来年春に遺伝子組み換え(GM)大豆の商業栽培を計画していることがわかりました。しかも、なんと、98、99年にGM大豆を4.6ヘクタール栽培し、出荷していたというのです。これらの大豆はどこに流通したのでしょう。国産大豆は非組み換えと認識して食してきた消費者には大変なショックです。

 報道によれば、宮井氏は、当時、米国のバイオ企業から直接除草剤耐性のGM大豆の種子300sを仕入れ、栽培してみたが、収量が上がらず、いったん栽培を止めたそうです。10a当たり180sの収量しかなく、生産量約8トンを出荷したとのこと。しかし、「その後、品種改良が進んだので、来春4.6ヘクタール作付けで最大で10トンの出荷を目指し、国内の食品メーカーなどに販売したい」と述べています。

 北海道は道産大豆の商品価値に悪影響を与える恐れがあり、栽培中止を求めています。しかし、宮井氏は「国がすでに安全性を認めた品種であり、栽培をやめるつもりはない」と強硬な姿勢です。

発芽後のラウンドアップ使用は違法

 宮井氏は、渡米経験を踏まえ、85ヘクタールにまで拡大した農地に大豆と小麦を栽培する、米国型農業を志向する農家です。
 この緊急事態であわただしくやり取りがされる中、反農薬東京グループから以下のような貴重な指摘が寄せられました。


 ラウンドアップレディ大豆など、グリホサート系の除草剤耐性GM大豆の栽培は、除草剤使用に際して、農薬取締法違反にあたる。ラウンドアップレディ大豆の場合、大豆の発芽後、雑草が生えそろった時点で、ラウンドアップ(グリホサート)を散布する。現在登録のあるグリホサート系除草剤は、大豆への適用が可能だが、当然のことながら、芽が出てから撒くと大豆も枯れるので、使用時期は、播種前10日以前とか播種後出芽前として、登録されている(なお、使用回数も1または2回以下)。

 GM大豆は、栽培上の作物分類は単なる大豆なので、農薬登録申請時の使用方法(希釈倍数、使用時期、使用回数など)を遵守する必要がある。そのため大豆の発芽後にグリホサート系除草剤を散布すると農薬取締法違反になる(農水省農薬対策室も同じ見解であることを確認)。登録申請されていない内容での使用は、懲役3年以下又は罰金30万円以下の罰則が、使用者に科せられる。

 グリホサート系除草剤を発芽後に使用するには登録農薬の登録変更申請をする必要がある。その際、残留性に関する試験成績を実施することがメーカーに求められる。発芽前と後の農薬散布では、当然、収穫物への農薬の残留量が変るので、きちんとした圃場試験が必要。通常、データ作成は、2個所以上の公的機関で試験し、分析については、1カ所は公的機関、他の1カ所はメーカーでよいことになっている。今後、どこかで、収穫までの試験を実施する必要があるわけで、このデータが提出され、農薬登録の変更が実施されない限り、国内での合法的な、遺伝子組換え除草耐性大豆の栽培はできないはず。


 なお、この農薬規制が施行されたのは、2003年3月からです。今後、バイオ作物懇話会にしても、宮井氏にしても、発芽後のラウンドアップ使用は違法行為となります。

 しかし、農薬使用基準を変えるべく、農薬登録の変更申請の準備が進められています。畜産草地研究所(栃木県那須郡西那須野町)が、ラウンドアップ耐性GM大豆を一般圃場で栽培した場合の環境への影響に関するモニタリング試験を行っています。10月下旬に収穫期を迎え、マスコミなどに対し、見学会を開催するそうです。農薬登録の変更で、数年以内にGM大豆の栽培が合法になることも視野に入れて監視していかねばならないでしょう。


経済的にも割に合わないGM大豆栽培

 組み換え大豆の生産は遺伝子汚染や混入が最大の脅威ですが、生産者にとっても次のような現実的課題があります。

 第一に、消費者の拒否があり、GMであることを明らかにしては、決して売れないこと。現在、国産大豆は「非組み換え」という消費者の認識のもとに購入、販売されているものであり、そこに汚染や混入を作り出すことは国産の優位性を損ない、消費者への裏切り行為ともいえます。

 第二に、地域全体が風評被害を蒙るリスクがあります。
 作付けにあたっては地元の同意が求められますが同意を得るのは困難です。
 GMとの共存をいうのなら、少なくとも、交雑(風評被害を含む)・混入に対する「損害賠償制度」や、「飛散防止の措置」などの法規制が整ってからでなくてはならないはずです。

 第三に、経済的にも見合わないこと。
 大豆の主要集荷先である全農と全集連が、GM大豆は扱わないこと、そして栽培した農家の周辺農家の大豆についても、交雑や混入の判断が難しいため取り扱わないことを表明(02年1月)しています。
 また、大豆農家はどちらかの団体に出荷しなければ国からの交付金を受け取ることができません。道農政部によると、道産大豆(黄大豆)の約75%が国の交付金の対象で、1俵あたり8000円が補填されています。02年度の道産大豆の平均価格は5500円程度で、交付金がなくなると経営に極めて大きな影響が出ます。
 もし、栽培が強行された場合、周辺農家の大豆までもが集荷や販売ルートから除外され、交付金が付かないだけでなく、独自にルートを開拓しなければならなくなります。周辺農家にまで経済的被害をもたらすことになります。

 第四に、収量においても優位性はなく、宮井氏の場合、通常品種に比べかなり収量が低かったわけです。米国のような大規模生産の場合に、除草の省力化ということがせいぜい目先のメリット(いずれ耐性雑草が発生する)といえるくらいです。

GM大豆栽培をバックアップしているのは誰?

 以上のように、日本ではGM大豆を生産するメリットはないのに、なぜ、生産を強行しようとするのかという疑問です。

 宮井氏は「バイテク情報普及会」のシンポに出席して組み換えの宣伝をしていることから、こことのつながりが想像されます。バイテク情報普及会は、本部は米国にあり、シンジェンタ、ダウ・ケミカル、デュポン、バイエルクロップサイエンス、モンサント、BASFアグロ、アメリカ穀物協会など、バイテク企業群が構成会員です。ここが宮井氏の組み換え大豆の栽培をバックアップしているのではないでしょうか。

 国際的なGMをめぐるせめぎあいにバイテク企業群がこの2,3年が勝負として、打って出てきていると感じます。日本でいったん商業栽培の実績を作ってしまいさえすれば、交雑や混入に日本の消費者はあきらめ、GM大豆に慣らすことができるとの狙いがあるのではないでしょうか。

 今、日本でのGM大豆生産の突破口を開かせないよう阻止することは未来に対する私たちの重大な責務です。
 なお、98,99年宮井氏が生産した「ラウドアップレディ」大豆は「茶目大豆」で、無表示で、北海道農産物集荷協同組合によって集荷・販売されたということです。ここは今後はGM大豆を扱わないと通知を出しました。


GM作物の栽培禁止を応援するために

 北海道は、屋外でのGM作物の栽培を原則として禁止する「食の安全安心条例」の来年2月の制定を目指しています。
 10月20日には、宮井氏が組合員として所属する、ながぬま農協が、加入組合員のGM作物の栽培を規制する方針を決めました。規制を無視した場合、GM以外の作物も含め一切集荷を受け付けないという罰則を設けたそうです。

 私たちがすぐできることは、豆腐や煮豆、納豆など大豆食品のメーカーに対し、質問を出すことです。企業への強い圧力になります。地元の規制を応援することに繋がります。

 質問の例としては、まず消費者の不安を伝え、@98年99年流通したGM大豆を商品に使っていないか A使用する大豆が遺伝子組み換えでないことの保証や検証はどうしているか BGM大豆に対する企業の姿勢や考えなど。

 商品のパッケージにある、お客様窓口、広報窓口の連絡先に電話をかけてみましょう。企業の回答を本会へもファックスかメールでお知らせください。


速報

 10月27日、ながぬま農協など地区の農家の説得によって、宮井氏が来年の生産は断念したと報じられました。(編集部)

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 組み換え大豆栽培中止に尽力された、ながぬま農協に当会よりメッセージを送ったところ、お返事をいただきました。


生産者と消費者の提携を推進している
日本有機農業研究会 御中

 メール、ありがとうございます。
 この度の「遺伝子組換大豆作付け問題」では、大変お騒がせし、御心配をおかけしましたこと深くお詫び申し上げます。
 貴団体をはじめ多くの方々の力をお借りし説得してまいりましたところ、おかげさまで昨日(10月27日)作付けをしないことを本人より確認することが出来ました。
 ながぬま農協は、常に「いのち」を育み、消費者に安全・安心して食べていただける農産物を届けることを念頭に置き、生産者総意のもと長沼町が一体となり、土作りから始まる環境に負荷を極力かけない取組、食の大切さ、農業を少しでも理解していただくためのグリーンツーリズム、スローフード運動などを展開しております。
 このすばらしい北海道・日本の環境をいつまでも残していく責任は、今の私たちにあります。
 これからも消費者に顔を向けた「安心」でないものは絶対に作らない・作らせないことを再確認しこれからも取り組んでまいりますので、更なる北海道産農産物の消費拡大にご協力いただきたくお願い申し上げ、取り急ぎご報告とさせていただきます。


ながぬま農業協同組合代表理事組合長 内田 和幸
〒069−1393  長沼町銀座北1丁目5番19号
TEL 0123−88−2228 FAX 0123−88−4113
E-Mail naganuma◆warp09.hotcn.ne.jp (◆を@に変えてください。)

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