JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 パブリック・コメントを農林水産省に提出

日本有機農業研究会 『土と健康』 04年7月号


 農林水産省消費・安全局農産安全管理課御中


遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認申請案件に対する意見


 貴職が四月一五日付で意見募集している標記の案件のうち、とくに「5 スギ花粉症予防効果ペプチド含有イネ(7Crp,Oryza sativa L.)(7Crp♯1)」および「6 スギ花粉症予防効果ペプチド含有イネ(7Crp,Oryza sativa L.)(7Crp♯10)」については、次のような理由から、申請は承認できないとする意見を提出します。よろしくおとり計らうようおねがいします。

(1)「5 スギ花粉症予防効果ペプチド含有イネ(7Crp,Oryza sativa L.)(7Crp♯1)」および「6 スギ花粉症予防効果ペプチド含有イネ(7Crp,Oryza sativa L.)(7Crp♯10)」について


(ア) この遺伝子組換え植物は、導入された遺伝子カセットの内容からみると、(ウ) 目的遺伝子(7Crp)は、スギ由来とはいえ、スギ花粉のエピトープを人工的に七つ繋げたものであり、人為的に合成したものである。(エ) KDELについても人工的なものである。スギ花粉症予防効果をうたうが、このような合成タンパクを食べる(食べさせる)ことは医療行為と同等とみなされ、したがって、医薬品をコメの中につくることにほかならない。そのため、遺伝子組換え食品の安全性審査基準では範囲外にあると考えられ、食品としての安全性審査において承認される見通しはない。健常者がふつうに食べる食品としての安全性が確認される見込みがないものに対して、屋外の隔離圃場での栽培実験を含む当該申請は、認められない。

(イ) (ア)をふまえれば、この遺伝子組換え植物がつくる遺伝子組換え体は、スギ花粉症の治療法に使う医薬品としての安全性審査が必要となるが、現時点でそのような類の安全性審査の方法も手順も整備されていない。そもそも、外見が食品であるコメのような植物で薬をつくることは、食品の概念、取扱い上の混乱を招くことから認められない。まず、そうした植物による医薬品製造の消費者を含む社会的合意を得た上で実験を行うべきである。

(ウ) (イ)を百歩譲って、たとえそうした遺伝子組換え植物の研究をするとしても、その場合であっても、医薬品としての安全性審査、管理方法などが整備された後にはじめて、屋外隔離圃場での栽培実験を行うべきであり、現時点での栽培実験は、認められない。

(エ) また、この遺伝子組換え植物のbカセットには、ハイグロマイシン耐性のものが使われている。抗生物質耐性遺伝子を組み込んだものは、認められない。

(オ) 慎重な予防原則の考えに基づく環境影響への配慮が必要であり、とくに従来の遺伝子組換え作物と異なるタイプであるだけに、よりいっそう厳重な予防措置がなされなければならない。したがって、申請は認められない。


(2)隔離圃場の施設について
 隔離圃場の施設は、万が一の事故があった場合には、回収不能である遺伝子組換え植物の性格をふまえるべきである。イネについては、自殖性が高いとされているが、イネには「空中花粉の放出がある」という指摘(加藤、生井1987)を看過するべきではなく、生井兵治氏の忠告である「何十キロメートルもの隔離が必要であるため、安全な栽培は実際的には不可能」(「花粉はどこまで、どのように運ばれるか」『土と健康』二〇〇二年三月号所収、日本有機農業研究会)という考えを尊重すべきである。したがって申請は、認められない。


(3)隔離圃場の作業要領について
 (1)(2)に述べたように、そもそも隔離圃場での栽培実験を認められないが、たとえ認めようとしても、以下の問題がある。


(ア) イギリスの科学者メイワン・ホウ博士の指摘する遺伝子組み換え生物のもつ「水平遺伝子伝達」(注 Horizontal Gene Transfer: Hidden Hazards of Genetic Engineering, Dr.Mae-Wan Ho 邦訳日本有機農業研究会発行、遺伝子組み換え資料01所収)では、遺伝子組換え生物のもつ導入された遺伝子がその種子や子孫という縦(垂直)の伝播だけでなく、横にある生物に水平伝達される問題が指摘されている。この問題についても、慎重な対策がなされていない。

(イ) 一つは、栽培終了後の組換え体の処理について、土壌に鋤き込むことにとどまっている。土壌にいる微生物への伝播を考慮し、土壌は焼却処分すべきである。

(ウ) 水についても、大雨で溢れた場合には横の溝に流れるし、日常的に水は浸透することになっている。水処理について、地下にしみこまない方策、溝から流れない構造にするべきである。

(エ) また、キセニア現象があることを踏まえると、不慮の事故等で、一般農家の水田に花粉が飛散した場合、その年の新米にGMが混入する事態になるので、慎重な交雑防止措置が必要である。

(オ) イネの花は、実際には、天候の具合などで長期にわたって咲くことがある。また、多年生であるイネは、条件さえ整えば、ひこばえから開花し続ける。花粉も強風であれば、さらに遠くに飛ぶ。不織布等で囲うことも万全を期して慎重に行われなければならない。収穫後も全体の覆いが必要である。また、スズメ等による種子の拡散にも慎重でなければならない。対策も網をかぶせるというだけでは認められない。

 以上のことから、申請内容は、承認できない。


(4)緊急措置について
 万が一、他の通常品種イネとの交雑が起きるおそれがある事故等が生じた場合、そのことによる生産者農家、および流通関係者等への損害賠償責任を明記することが必要である。さらに、日本の今の現状では、広範囲にわたるいわゆる風評被害が避けられないが、それによる損害に対しても責任のあることを明記することが必要である。したがって、申請内容は、認められない。


(5)現時点で、スギ花粉症については、未解明の部分がきわめて大きい。今の時点で、「遺伝子組み換えスギ花粉症予防効果ペプチド含有米」と呼称することも誤認を与える。医薬品をつくるイネであること、医薬品が含まれるコメであることがはっきりと認識できる名称にすべきである。しかもそのようなイネ、コメについての緊急な必要性、有用性について、社会的な合意はまったくとられていない。


以上のことから、標記のスギ花粉症予防効果ペプチド含有イネの申請は認められない。


以 上

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