JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 ダイズの花粉飛散とミツバチによる花粉運搬の可能性
 昨年度の農林水産省の一般農地での栽培に関する指導
 文書 (参考資料1〜4について)

日本有機農業研究会 『土と健康』 03年11月号

 大豆の場合、自家受粉の植物なので周辺の通常品種との交雑はないのでは?といわれていますが、交雑はまったくゼロではないことが実証されています。参考1は、折衝の過程で農林水産省技術安全課が市民側に送付してきた「ダイズの花粉飛散」についてと題する文書です。この中で、自然交雑率の試験データとして、うね幅七五センチメートルの隣接する大豆への自然交雑率は〇・〇六%という報告(菊池ら、一九九三)があり、また、大豆は虫媒花であり、ミツバチの放飼により交雑率がやや高まるとも述べています。
 こと、この問題に関しては、花粉飛散による通常品種や近隣種等との交雑は「ゼロ」が保証されなければなりません。しかし、「ゼロ」は不可能であることを、生井兵治前筑波大教授は「花粉はどこまでどのように運ばれるか」(本誌二〇〇二年三月号)で明らかにしています。

 また、ミツバチも、大豆の花粉を足につけて遠方まで運びます。ミツバチの行動半径は約二キロメートルといわれています。参考2は、実証的データや報告を基に、詳細に蜜源植物について解説した関口喜一著『日本の養蜂植物』(柏葉書院)からの「ダイズ」の項の抜粋です(魚住道郎氏提供)。ミツバチは、必ずしも大豆が大好きというわけではないようですが、まったく蜜や花粉を集めないわけではないことが、述べられています。
 参考3は、昨年一一月に、農林水産省が日本モンサント社に対して、組換え大豆を一般の農地で栽培する場合は、事前に周辺地域、住民の理解を十分に得るとともに、栽培地が属する都道府県の大豆の生産流通担当部局、JA等の関係者に、事前に栽培に関する情報提供を行うことや、種子の生産・流通上の混乱を招かないための交雑、混入防止などの措置について十分に徹底することを要請した文書です。
 同様の文書は、参考4のように、同時に地方農産局の担当部長にも出されており、管内における遺伝子組み換え作物の栽培について日頃から情報収集に努め、情報があれば、住民の理解を得ることや、交雑・混入防止等の措置を行うことを徹底するよう指導することを通知しています。

 今のところ、このような指導や措置を義務づける根拠となる法律等はないので、日本モンサント社に対する文書では、「お願い」となっています。しかし、このような指導は、今回の栽培阻止活動の大きな助けになった面があります。

(久保田)


参考1 農林水産省技術安全課の資料(2003年8月1日付) ダイズの花粉飛散

 一株の開花期間は普通三〜四週間であるが、長いものは六週間に渡るものもある。後期に開花したものは落花することが多い。

 雌雄同花で、雌しべは開花一日前から開花後二日間ほど受精能力を持つ。開花はほとんど午前中だけである。通常、開花した時点では既に受粉が行われており(閉花受粉)、自家受粉率が高いことから、自然交雑率は極めて低い(0.5−1%以下)。虫媒花粉であり風媒はしないので、媒介昆虫がいなければ基本的には他家受粉しない。人工的にミツバチを放飼するなどすると交雑率がやや高くなる。国内での自然交雑率の試験データとしては、隣接うね(うね幅75cm)間で0.06%という報告(菊池ら 1993)がある。

 国内での交雑防止のための基準としては、種苗法第五条第一項の規程に基づく野菜の指定種苗の生産などに関する基準で、えだまめの種苗の純度確保のために、開花期に母本が父本以外の交雑花粉源から10m以上隔離されるようにすること(ただし、被覆材、障害物等により隔離される場合はこの限りではない)となっている。

 海外での遺伝子組換えダイズを限定的ほ場試験(confined field trial)する際に交雑防止のための最小隔離距離は、カナダでは10m、米国では0m(ただし物理的混入を防ぐのに必要な距離は必要)となっている。

【参考文献】・農学大事典、養賢堂
        ・農業技術体系 作物編6「ダイズ・アズキ・ラッカセイ」、農文協
        ・ダイズの生物学的に関するコンセンサスドキュメント、OECD環境局
        ・種苗法関係法令通達集、社団法人 日本種苗協会


参考2 ミツバチはダイズの花粉を運ばないわけではない

(魚住道郎氏の資料より)

 関口喜一著『日本の養蜂植物』(柏葉書院、1949年)98ページより抜粋。(一部、旧字を当用漢字に改めた。)

ダイズ Glycine Soja マメ科
 1 支那原産で広く畑に栽培される一年生草本。葉は三個の卵円形全辺の小葉よりなる羽状複葉で互生する。茎葉ともに毛を被る。秋種子を莢の中に熟す。豆は黒色(クロマメ)、黄白色、淡褐色、緑色等種々ある。
 2 夏葉腋に小形の紫紅色又は白色の蝶形花を開く。
 3 ダイズの蜜源価値については種々の説がある。

 蜜蜂はダイズに朝七時ごろから九時ごろまでさかんに働く。花粉を集めないが蜜をよく集めた(産業養蜂 八二号 宮城作田氏)
 周知のとおりダイズには殆ど流蜜というものがない(同誌 八一号 秋田高橋氏)
 八月半ば満開だが蜂の活動は例年の如く少い。暗褐色の花粉をわずかに集める(岩手伊勢氏報告)
 当地はダイズの花にめつたに働かないが、年により蜜を花粉を集めるのを見ることがある。当地はダイズの畑作はわずかだが、あぜ豆と称して水田の畦畔には到る所に植えてある(山口県松田明一氏報告)。
 北海道十勝地方は全国的なダイズの生産地として知られているが、花粉をわずかに集める程度で養蜂上大した価値がない。
 American Honey Plants はダイズについて次のようにいっている。

 ダイズの蜜源としての価値についての報告は乏しく、ある条件の下では豊富に流蜜するが、又他の条件では蜜蜂を引きつけない。いかなる土壌と気候がこの植物の流蜜に好ましいかについてはまだ知られていない。各地からの報告は非常にまちまちである。
  a Illinois地方に於いて著者(Pellett)の限られた観察ではこの花に蜜蜂は働くのを見たことがなかった。
  b Tennensee地方からの報告によれば朝の九時から夕方まで働くという。
  c Pinkham(ワシントン)はダイズの花は毎日規則正しく流蜜するように見えないにもかかわらず、強群は三〇〜四〇日間に
    一〇〇〜二五〇ポンドの蜜を貯えるといつている。
  d Joe Gass(Tennenscee)は、蜜蜂はこの花によく働きながら他に蜜源がない時でも余蜜を得ることができない。
    しかし盗蜂を起すような時にこの花のため蜜蜂を忙しく働かせ、又育児室に幾分貯蜜するので、
    この点価値があるといつている。
  e ダイズの蜜は色はうすく特有の香をもち、結晶が早く、上等品であるという。

 4 その種子が重要な食品とされていることはいうまでもない。そして食物の乳ともいうべき高い栄養価を持っている。


参考3 農林水産省農林水産技術会議事局及び生産局が日本モンサント社に出した指導文書

14農会第997号 平成14年11月21日

日本モンサント株式会社  代表取締役社長 山根 精一郎 殿


農林水産省 農林水産技術会議事務局  技術安全課長 長谷川 裕
生産局  農産振興課長 吉田 岳志

安全性が確認された組換えダイズを栽培する場合の留意点について(お願い)

 ご承知のとおり、最近の組換え技術の発達に伴い、我が国においても商業栽培するための安全性確認(食品、飼料、環境)が既に終了している農作物が存在します。この中にはダイズ等の我が国における主要な農作物も含まれており、今後、農家等が試験的に導入し、一般ほ場で栽培されることも想定されます。この場合、食品、飼料、環境に対する安全性の観点からは、栽培することについて何ら問題はありません。
 しかしながら、ご承知のとおり、現状において国産大豆については、実需者等のニーズを踏まえ、いずれの産地においても組換え大豆でないことを強調した販売戦略を持っているとともに、生産者から販売委託を受ける生産者団体等においても組換え大豆は一切取り扱わない方針となっております。こういった中、もとより大豆は自殖性が高い作物で、一般的には品種ごとに収穫・調整・流通しているものですが、一般ほ場で栽培される以上、万が一でも周辺の非組換え大豆との交雑や収穫物の混入といったことが起これば、生産・流通上の混乱を招かないとも限りません。
 従いまして、組換え大豆の開発企業であります貴社におかれましては、農家などから組換え大豆の栽培に関し相談等が寄せられた場合、当該農家等に対し、安全性確認後の試験的栽培であっても、栽培に当たっては、事前に周辺地域、住民の理解を十分に得るとともに、栽培地が属する都道府県の大豆の生産流通担当部局、JA等の関係者に、事前に栽培に関する情報提供を行うことが必要であることを周知徹底していただきますようよろしくお願いいたします。また、種子を提供するに当たっては、生産・流通上の混乱を招かないための交雑・混入防止などの措置について十分に徹底していただきますようお願いいたします。
 なお、別途、都道府県の担当部局に対しては、地方農政局等を通じ別添のとおり通知していることを申し添えます。


参考4 農林水産省農林水産技術会議事局及び生産局が各地の地方農政局生産経営部長宛に出した指導文書

14農会第997号 平成14年11月21日

○○農政局生産経営部長 殿


農林水産省 農林水産技術会議事務局  技術安全課長 長谷川 裕
生産局  農産振興課長 吉田 岳志

安全性が確認された組換えダイズを栽培する場合の留意点について

 最近の組換え技術の発達に伴い、我が国においても商業栽培するための安全性確認(食品、飼料、環境)が既に終了している農作物が存在します。この中にはダイズ等の我が国における主要な農作物も含まれており、今後、農家等が試験的に導入し、一般ほ場で栽培されることも想定されます。この場合、食品、飼料、環境に対する安全性の観点からは、栽培することについて何ら問題はありません。
 しかしながら、ご承知のとおり、現状において国産大豆については、実需者等のニーズを踏まえ、いずれの産地においても組換え大豆でないことを強調した販売戦略を持っているとともに、生産者から販売委託を受ける生産者団体等においても組換え大豆は一切取り扱わない方針となっております。こういった中、もとより大豆は自殖性が高い作物で、一般的には品種ごとに収穫・調整・流通しているものですが、一般ほ場で栽培される以上、万が一でも周辺の非組換え大豆との交雑や収穫物の混入といったことが起これば、生産・流通上の混乱を招かないとも限りません。
 従って、貴局及び貴管内都府県においては、管内における組換え大豆の一般ほ場栽培に関しては、日頃から情報収集に努められるようお願いいたします。また、情報があった場合は、その栽培者に対し、安全性確認後の試験的栽培であっても、栽培に当たっては、事前に周辺地域、住民の理解を十分に得ること、生産・流通上の混乱を招かないための交雑・混入防止などの措置を徹底していただき、必要に応じて状況確認を行っていただくようよろしくお願いいたします。
 なお、貴管内都府県に対しては、貴局よりこの旨周知いただくようお願いいたします。
 また、開発企業に対しては、別途、別添のとおり通知していることを申し添えます。

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