JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 GMどうしの交配種の安易な認可は危険

日本有機農業研究会 『土と健康』03年10月号 遺伝子組換え情報室 河田 昌東

 二〇〇三年六月一二日、「厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会衛生バイオテクノロジー部会」(以下、厚労省部会)は、モンサント社とデュポン社から出された新たな遺伝子組換えトウモロコシ及び綿について新たに六品目を認可した。しかし認可は従来とは全く違うやり方で行われ、多くの問題がある。


一 認可された遺伝子組換え体

@ ラウンドアップ除草剤耐性トウモロコシ(GA21)と害虫抵抗性トウモロコシ(MON810)の交配種
A ラウンドアップ除草剤耐性トウモロコシ(NK603)と害虫抵抗性トウモロコシ(MON810)の交配種
B ラウンドアップ除草剤耐性トウモロコシ(NK603)と害虫抵抗性トウモロコシ(MON863)の交配種
C ラウンドアップ除草剤耐性綿(1445系統)と害虫抵抗性綿(15985系統)の交配種
D ラウンドアップ除草剤耐性綿(1445系統)と害虫抵抗性綿(531系統)の交配種
E グルフォシネート除草剤耐性トウモロコシ(T25)と害虫抵抗性トウモロコシ(MON810)の交配種

二 従来のやり方を逸脱した安易な認可

 今回モンサント社から出された安全審査の申請は、これまでと全く違う点があった。それは上記の品種名でわかるように、過去に認可されている遺伝子組み換え(以下GMと略記)体どうしを普通の交配で掛け合わせたものだ、という点である。これらを認可した「厚労省部会」の根拠は以下の3点である。@いずれの交配種も親株の性質を安定に保持している。A交配した親株は何れも同じ種同士である。B消費者による交配種の摂取量、食用部位、加工方法も親株と同じと考えられる。C個々の親株の安全審査はすんでいるのだから、それどうしの交配種も安全である。従ってこれらの新品種の安全審査を個別に行う必要がない。

 この中で最も問題なのはCである。こうした論理がまかりとおるなら、すでに認可済みのさまざまなGMどうしを交配で掛け合わせ、複数の外来遺伝子を含む新たなGM作物を容易に認可することができる。この認可が終わったあと、現在、新たなGMどうしの交配種の認可申請がダウケミカル社とデュポン社から出されている。これは交配という言葉のイメージを逆用した詭弁である。複数のGM遺伝子の共存は、親株のもつ問題点の単に単純な足し算ではなく、新たなリスクを増やす。以下、問題点を列挙する。

 □ 考慮されない遺伝子の相互干渉

  細胞内に数万個ある遺伝子が作るタンパク質、代謝産物などは複雑に相互作用しあっている。ラウンドアップ耐性大豆において、除草剤耐性を獲得した結果、リグニン(木質成分)の合成が強化され、高温や乾燥に弱くなったり組み換え前の親株より収量が減少するといった、新たな性質を獲得したのは外来遺伝子と宿主遺伝子、それらの生産物の相互干渉の結果である。今回認可された除草剤耐性遺伝子と害虫抵抗性遺伝子の共存によって、それぞれの親株との形質の違いをもたらさないかどうか、新たな組み換え体の安全審査同様のチェックが必要である。にもかかわらず、今回の認可はそうした手順を全く無視した。現在、多種類の遺伝子の発現状態を一挙に調べるSAGE法などが可能になっており、こうした遺伝子の相互干渉の有無、その影響などを調べることは不可能ではない。

 □ 複雑化する組み換え遺伝子と不完全な機能

 除草剤耐性と害虫抵抗性はそれぞれ別の土壌細菌の遺伝子に由来する。従って、トウモロコシの中で、異種生物の遺伝子が同居することになる。すでに、それぞれは遺伝子のスイッチとして、カリフラワー・モザイク・ウィルスのプロモーター(CaMV35S配列)を持ち、遺伝子の終止信号として、植物の腫瘍形成細菌由来のNOS3'配列をもつ。交配で除草剤耐性遺伝子と害虫抵抗性遺伝子が共存しただけでなく、前からあるこれらの外来遺伝子は倍化されたことになる。CaMV35Sプロモーターは、本来カリフラワー病原ウイルスの遺伝子プロモーターだが、ウイルスのみならず、細菌、植物、動物を含む(人間も)すべての遺伝子の発現を可能にすることが知られており、植物の中で機能していない「休眠状態の病原ウイルス」遺伝子を目覚めさせる危険性を指摘する研究者もいる。

 また、NOS3'終止配列の機能が不完全で異常な遺伝子の読み取りが起こっていることが最近明らかになっている。(国の安全審査では「2次転写物」と読んでいる)。その結果、本来の除草剤耐性や害虫抵抗性タンパク質とは異なる、長い異常タンパク質ができている可能性がある。当初の安全審査ではこうした遺伝子の異常読み取り(リードスルーという)が存在しないことが、安全性認可の一つの条件であったが、モンサントは、最近になって追加資料を政府に提出し、リードスルーの存在を認め、政府もそれを追認している。GMどうしの交配種ではこうした異常タンパク質のできるリスクが倍化している。異常タンパク質はアレルゲンなどの危険性につながる。

 □ 抗生物質耐性遺伝子の拡散

 これまで多くの組み換え体作出において選択マーカーに抗生物質耐性遺伝子が利用され、食物として摂取した際に体内で抗生物質耐性菌の出現が懸念されている。従来、モンサント社の除草剤耐性遺伝子GA21とNK603、害虫抵抗性遺伝子MON810は抗生物質耐性遺伝子を排除することに成功し、それを一つのメリットと主張してきた。このたびこれらの交配相手に使われた他のすべての親株にはカナマイシン、ネオマイシン、アンピシリンなどの抗生物質耐性遺伝子が組み込まれている。今回の交配で、すべての交配種が抗生物質耐性遺伝子を持つことになる。これもまた、GMどうしの交配による安全性低下をもたらす。

三 遺伝子汚染の追認と輸入のための事前承認

 今回の認可は、アメリカにおける遺伝子汚染の現実を追認するものである。実際、アメリカ国内においては、除草剤耐性や害虫抵抗性の遺伝子を持つGMトウモロコシの栽培面積の増加に伴い、それぞれの品種の純粋性を保つことがすでに難しくなっている。日本の市民団体が独自に調べた結果でも、本来別個に認可されている除草剤耐性どうしや除草剤耐性と害虫抵抗性が一つのブランドに同居している例が少なくなかった。中には3種類の組換え遺伝子が同居している例もあった。今回の認可はこうしたアメリカにおける遺伝子汚染の現実を追認し、今後の輸入の際に起こりうるトラブルを避けることが目的と考えられる。厚生労働省によればこうしたGMどうしの交配種の認可は日本が世界で初めてという。汚染GM輸入にむけた事前認可は本末転倒である。

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