JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 パーシー・シュマイザーさん ―講演要旨―

日本有機農業研究会 『土と健康』 03年8・9月合併号 安田 節子

 七月三日「植えたらオシマイ!遺伝子組み換え作物の作付けを止めよう東京集会」が千駄ヶ谷区民会館大ホール(二八〇人参加)で開かれ、モンサント社と裁判で闘っているカナダの農民シュマイザーさん(七二歳)の講演が行われました。以下は講演要旨です。


 私は一九四七年から農家を営み、カノーラ、オーツ麦、豆を作っている。また、五〇年来カノーラの自然育種を行い、地域に合う耐病種子の開発者として知られる。かたわら、二五年間を公職(地域の首長や議員、連邦と州の農業委員)についてきた。

 すでにGMOを導入したことでカナダ・米国で起こっていることを伝えたい。日本で作付けすれば同じことがおこる。一九九八年モンサント社は私に対してモ社のGMカノーラを違法に入手し、ライセンスなしで栽培したと特許侵害で告訴をしかけてきた。私と妻は五〇年以上かけて作った種子がモ社のGMO種子で汚染されたのではないか、モ社が賠償すべきだとモンサントに立ち向かう決意をした。二〇〇〇年五月、連邦裁判所の予審が開始された。モ社は、どのような経緯、交雑とか、風か、虫か、蜂か、農家のトラックやコンバインからこぼれ落ちたかは問題ではなく、その畑にモ社の特許遺伝子が入ったものがあったという事実は特許侵害にあたり、モ社に所有権が移転すると述べ、この主張を認める判決が出された。上告したが、二審でもモ社が勝訴。それで昨年一一月最高裁に上告した。五月に受理が決まり、二〇〇四年一月に法廷が開かれる。これまでに二七〇〇万円を弁護士費用など訴訟に使った。この裁定はカナダ農民ならず世界の農民に影響するだろう。特許法は世界中で適用されるからだ。

 GM種子を購入した農家にはモ社との契約書にサインが求められる。契約書は、農家の権利を剥奪する内容となっている。

1 自分の種子を使ってはならない。
2 毎年、モンサント社から種子を購入すること。
3 すべての化学肥料、農薬をモ社から買わなければならない。
4 違反して、モ社から受けたことをマスコミにも友人にも話してはいけない。
5 年間一ヘクタールあたり、四〇ドルのライセンス料を払うこと。
6 モンサント・ポリスが三年間畑にくることを認めなければならない。
7 モンサント・ポリスに畑、倉庫、税金支払いの記録を見せなければならない。

 GM種子を使っていない農家にモ社から賠償請求書がある日突然届く。「GM種子を育てている証拠を持っている。農地の大きさに応じて○○万ドル支払いなさい。そうしなければ訴訟を起こす。この手紙のことを誰にもいってはいけない。」と書いてある。

 「近隣農家がライセンスなしにGM生産しているようなら、モ杜に通報してください。通報したら皮ジャケットをプレゼントします」といったモ社のパンフ・広告が撒かれている。通報を受けると二人のモンサント・ポリスがやってくる。「訴訟になると、農場は残らないぞ」と脅され賠償金が取られる。農家は相互不信に陥り、コミュニティが崩壊してしまう、これが一番問題だ。これは、農家が怯えきってモ社に反抗しないようにするためだ。多国籍企業は政府を超えて農民を支配する存在になる。私はこうした農民からたくさんの相談を受けている。農民の人生を奪っていくことが、GM導入の時には知らされていない。

 導入して二、三年後に起きたことは @品質が悪い A収量が、大豆では一五%減 B農薬の使用が三倍に増え、スーパー雑草が現れた C純粋な種子が汚染され、カナダにはGM汚染されていないものはなくなり、有機農家はもう大豆とカノーラは栽培できなくなった。D市場を失った。

 北アメリカで農民に対してモ社は五五〇件もの訴訟を起こしている。それらがこの一人の農民対巨大企業との戦いの判決を待っている。カナダ最高裁は、昨年一二月、高度生命体には特許は認められないという判決を出している。カナダ最高裁によって農民の所有権と大企業の知的所有権のどちらが上にあるかの裁定が下されるだろう。




 繰り返してはならない、多国籍企業のおそろしい罠

大阪府有機農業研究会  尾崎 零

 「もはや私たちには選択肢がありませんが、日本のみなさんにはまだ選択肢が残っています」。シュマイザーさんは幾度となくそのことを口にされた。この指摘は重要な意味を持つがそのことは後にふれるとして、彼の話からモンサントの異常なまでのやり方がより鮮明に分かった。いわば映画によく出てくる証拠のねつ造とか濡れ衣とでもいうような話しだ。GM作物を作っている農場周辺の畑をモンサントポリスが調査し、少しでもGMを見つけたら特許侵害だと賠償を請求してくるという。断ると、告訴といういわば周辺農民に対しての見せしめ的なやり方。

 そして出た判決は「GMがどのようにして畑に入ったかは問題ではない。そこにあること自体が特許権侵害なのだ」という。判決はさらに続く、「GMと交雑した作物がその農場にあれば、その作物の所有権はモンサントにある」というのだ。自分の畑で自分が作ったものなのに。GMに侵害されたのはこちらのほうだ、といってみても通じないのか。こういった権力の横暴さにはワタクシ、かなり憤りを感じる。

 シュマイザーさんが講演の最後にスライドを見せてくれた。数あるスライドの終わりに彼の家族の写真が映し出された。彼の息子や娘夫婦に孫たちが映っていた。その写真を見ながら彼は話した。「なぜ、モンサントと闘うか。それは次の世代に対しての責任である」と。

 「選択肢」の残さされている私たちにはこの言葉の意味をしっかりと認識する必要がある。次世代に対しての責任ある活動として有機農業(運動)を通じ、「生命を大事にする社会」の実現に向けて気持ち新たに、「生命をとるのか経済をとるのか」の責任ある選択をしなくてはならない。ことはゆっくりとはしておれない。野に放たれた野獣が元に戻ることはあっても、野に放たれたGMは元に戻ることはなく増え続けていくことになるのだから。

 巨大企業相手に奮闘しておられるシュマイザーさんに心より敬意を表します。

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