JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 組み換え作物の新たなリスクに関する
 農水省、厚労省交渉

日本有機農業研究会 『土と健康』 02年10月号 科学部

 カナダの農民シュマイザーさんは、モンサント社からGM菜種の特許侵害で賠償を要求され、裁判で交雑による汚染を主張していたのですがこの9月に敗訴となりました(最高裁に上告の予定)。GM作物の汚染は生産者にとって深刻な問題をもたらしています。日本でも輸入種子のGM汚染の実態が明らかになっています。種子のGM汚染をどう防ぐかが緊急の課題であり、加えて、組み換え大豆の実験栽培に乗り出す生産者が出始め、コメの野外実験栽培を含め、GM遺伝子汚染の防止体制が問われる事態に直面しています。また、7月、英国で行われた人での初めての実験で腸内バクテリアに組み換え遺伝子が取り込まれることが実証され、重大な健康影響があることが明らかになりました。こうした重大な局面にあたり、日本有機農業研究会科学部から他団体に呼びかけ,12団体連名の質問状を農水省、厚生労働省に提出、交渉を行いましたので、以下報告します。

〈農水省への質問〉(要旨)

1 組み換え作物導入遺伝子が土壌菌、動物や昆虫の腸内細菌へ水平伝達することについての見解は? 国際惰報・文献の収集はしているか?
答え:否定できないが、ハードルがいくつもあり起こりにくいものと認識している。花粉から昆虫の腸内微生物への伝達は聞いたことがない。文献の収集は個人的には努力しているが、組織的には特にするようにはなっていない。

参加者から:ドイツの報告で組み換えナタネの花粉からミツバチの腸内細菌に遺伝子移行起こっている。昆虫の腸内はアルカリ性のため組み換えは起こりやすい。
答え:情報をこちらにもいただけるとありがたい。

2 国内での組み換え大豆などの野外栽培圃場の実施主体を把握しているか? (交雑を防ぐため)開花前刈り取り処分の確認をしているか?
答え:環境安全性評価確認後なら生産は自由。大豆についてはバイオ作物懇話会が全国6ヵ所(北見市、茨城県新利根町、谷和原町、福井市、滋賀県高月町、鳥取県鹿野町)と各試験場で栽培していることを把握。任意だが国への通知はしてきている。開花前処分はしくみとしていないので特段確認する必要ない。ただ種子の(特許の関係で)入手問題にならないよう開花前に刈り取っている。

3 遺伝子汚染のない種子の確保はどのように?
答え:(社)日本草地畜産種子協会が中国でデントコーン種子を増殖して分別管理して輸入。輸入時DNA検査済みのもののみ販売

4 今年度の輸入トウモロコシとナタネ種子の輸入実績は? 汚染のないことの確認の方法は?
答え:飼料用トウモロコシ種子1665トン、食用トウモロコシ種子304トン、ナタネ種子1.6トン
 海外採種者にGM分別管理とPCR検査を求めている。検査済みのものをロット毎にGM検査することを種子協会や民間に委託している。ただし検知試験の方法、限界値は統一されていない。品種やサンプリングの方法によつて違い、(限界値は)0.1〜0.5%位。

5 昨年国内栽培用輸入種子がDNA汚染が判明したが、実際の圃場で栽培されたものの汚染を確認しているか?
答え:していない。

6 大学、公的機関、企業などの組み換え作物の野外栽培試験の把握しているか。人工遺伝子が自然生態系に紛れ込まないようどのような管理監督しているのか。
答え:申請書類出るので把握している。STAFF(農林水産先端技術産業振興センターの略)の、虎ノ門にある「バイテク資料惰報室」で閲覧はできる。隔離圃場から一般圃場との距離決めるなど業務安全委員会を組織している。(閲覧のみでコピーできないとのこと。会場から情報公開になっていないと批判の声)

☆質問の7、8、10(有機と表示間題関連)は担当者不在のため9月12日へ持ち越し。

9 来年度の種子汚染を防ぐための対策は?
答え:種子会杜は海外での検査と国内検査のダブルチェックをする。

〈厚生労働省への質問〉(要旨)

1 水平伝達が人で起こったことはこれまでの安全性評価のあり方をみなおすべきではないか。見解は?
答え:厚生科学研究院で昨年(人工)胃液での分解はみているので問題はない。

2 0.5%混入から表示、すべてに表示というEU並の表示義務化を求める。
答え:0.5%まで下げるのは難しい。

3 因果関係の立証まで規制できない現行の食品安全行政を予防原則に転換すべき。
答え:食品安全委員会では予防原則を取り入れるという方向がでている。(以上)

 交渉をして感じた事は、まず農水省への質問2についての回答で、組み換え大豆の試験栽培では開花前に刈り取っているとの説明で、それはモンサント社の意向で、特許種子を自家採種させないためだったとは一同驚きでした。本来行政が環境汚染を防ぐために開花前処分を義務付け、確認を行うという体制が不可欠なのに、そういう体制はまったくなく、モンサント杜の自社利益を守ろうとする措置がたまたま環境汚染の防止にもなったにすぎないのです。なお、日経バイテク9月号によれば北見市の農家角田誠二さんは1ヘクタールもの規模で組み換え大豆の試験栽培をしているそうです。開花前処理をしたとありますが、これの確認に責任をもつ人はいないのです。大規模大豆生産地域での試験栽培は潜在的リスクを生みだしています。農水省は環境影響に対する認識がまるで甘いと感じました。英国では試験栽培農地を登録させることになっています。組み換え栽培後の環境(土壌も)影響を把握するためにも、農地が転売されて知らずに生産したものが市場に出まわるのを防ぐためにも必要だからです。当然農地の価値は下がり、転売が困難になることもあり得ます。

 環境影響について次々と新しいリスクが明らかになっているのに役人の対応はにぶく、危機意識が欠如しています。BSEの対応とちっとも変わらない無責任体制だとつくづく感じさせられました。

 なお、生産者がモンサントなどの宣伝に乗せられて組み換え作物を生産(試験栽培でも)することは、取り返しのつかない汚染や経営リスクを自ら引き寄せることになることを知ってほしいと思います。生産物は売れないし、風評被害にもあいかねません。国産も遺伝子組み換え汚染となったなら消費者は国産にこだわることをあきらめるかもしれません。国内汚染、それこそモンサント社の思う壼ではないでしょうか。有機生産者以外の一般生産者の人達と遺伝子組み換え作物のリスク情報を共有することが緊急課題です。

 厚生労働省の回答1はお粗末の限りです。国際的にこの実験結果について大きな懸念が広がっているのに、認識ゼロです。人が一回の食事をしてわずかながら起こったことを、だからほとんど起こり得ないと結論付けるのか、たった一回の食事でもわずかながら起こったのだから食べつづけることはいったん中止させなければと考えるのかの違いです。国民の健康を守るのが厚生労働省の仕事のはず。予防原則はこれから導入されるといいながら、いま現在明らかになったこのリスクヘなんの対応もしないの・は予防原則の意味がわかっていないとしかいいようがありません。両省に対し、引き続き交渉を重ねていく必要があります。

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