JAPAN ORGANIC AGRICULTURE ASSOCIATION

日本有機農業研究会

 進む種子の独占、遺伝子汚染も広がる

日本有機農業研究会 『土と健康』 02年7月号 科学部 安田 節子

 GM(遺伝子組み換え)作物の商業生産が本格化した1996年以降、GM生産は、1996年170万ha、1997年1100万ha、1998年2780万ha、1999年3990万haと拡大し、2000年は4300万haと96年の25倍になった[ISAAA(Internatinal Service for the Acquisition of Agri-Biotech Applications)のデータから]。ただし、2000年になって伸び率は前年の4分の1に鈍化した。欧州の規制など世界的に消費者の懸念が広がり、GM農産物の先行きの不透明感が作付を手控える原因となったのではないか。遺伝子組み換えナタネの生産国カナダでは、2000年、GM品種は生産減となった。欧州への輸出が困難になりナタネの価格低迷に見舞われた。それで、遺伝子組み換えではない除草剤耐性の品種が増加し、また通常の品種への復帰も見られる。

国名199819992000シェア(%)
米国20.528.730.370
アルゼンチン4.36.78.821
カナダ2.84.03.07
中国<0.10.30.51
南アフリカ<0.10.10.2<1
オーストラリア0.10.10.2<1
ルーマニア<0.1<0.1<1
メキシコ0.1<0.1<0.1<1
ブルガリア<0.1<0.1<1
スペイン<0.1<0.1<0.1<1
ドイツ<0.1<1
フランス<0.1<0.1<0.1<1
ポルトガル<0.10
合計27.839.943.0100

注:<0.1 は10万ha未満、<1 は1%未満、―は当該年の生産がないことを示す。

 2000年のGM作物生産を作物別にみると、大豆が2500万ha、トウモロコシが1000万ha、綿花が500万ha、ナタネが300万haで、これら4作物でGM作物生産の99%以上を占める。また、2000年度の世界のGM作物生産に占める国別割合は、米国70%、アルゼンチン21%、カナダ7%で、これら3ヵ国で全体の98%を占めている。

 遺伝子組み換え大豆のほとんどは除草剤「ラウンドアップ」に耐性のある大豆で、2000年は米国の総生産の54%、アルゼンチンの92%を占める。

 遺伝子組み換えトウモロコシは米国での生産の伸びが鈍化する一方、アルゼンチンではシェアが5%から20%に急増、中国でも面積は少ないが増加している。

 バイテク産業が力を持つ米国が最大の生産国であるのは当然としても、なぜアルゼンチンでGM大豆の生産が92%に、GMトウモロコシが20%にもなっているのか。それはアルゼンチンの種子会社がほとんどモンサント社に買収された結果だ。この間、バイテク企業はいずこも世界規模で種子会社の買収を展開した。米国モンサント社は穀物メジャー、カーギルの国際種子部門を買収。また北米・南米の主だった種子会社をことごとく買収した。モンサント社は今や、小麦・大豆・トウモロコシ・綿花の種子をほとんど手中に収めている。スイスのノバルテイス社も、韓国の業界二位のソウル種苗を買収。日本の種苗大手、「サカタのタネ」の資本にもノバルテイス社傘下のスイスの投資顧聞会社の名があるという具合だ。アルゼンチンは米国に次ぐ世界第二位の大豆生産国だが、いまや農家が普通の大豆の種子が欲しいと思っても、モンサント社の独占下においてはモンサント社が売りたい種子しか販売されないという事態なのだ。

 バイテク企業が種子企業の買収に走った背景に「生物特許」がある。生物特許は1980年代に米国最高裁判所が、遺伝子組み換えの微生物に対して初めて生き物に「特許」を認めたことに始まる。1998年には「植物新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)」が改定され、新品種の開発者の権利はこれまでの「品種登録権」に加え「特許権」を認めることとなった。適用範囲はすべての植物に広がり、その権利はブドウならワインにまでと加工品にまで及ぶ。登録は「細胞一個」の単位まで認められ、自家採種は認めない。しかし実際には、海外の農家に自家採種禁止を守らせ、見張ることは不可能だ。そこでバイテク企業各社が開発し、特許申請したのが「植物遺伝子の発現抑制(ターミネーター/トレータ)技術」だ。これをほどこせば自家採種した第二世代の種子は毒素ができて"自殺"してしまう。国際的批判を浴びていったん応用は凍結されたが、2001年5月に米国農務省はモンサント社の綿花にターミネーター技術の応用を認めている。

 インドにおいては、産業の中心である綿花が、遺伝子組み換えのモンサントの組み換え綿花に切り替えられようとしている。現在、環境影響評価をまったくの非公開のまま大規模な試験栽培を行っている。インドは綿花の原種があるところだ。それが組み換え遺伝子に汚染されることをインドの農民はひじょうに恐れている。

 品種交配を重ねていくと環境的に脆弱になる。新たな病気や害虫の発生、乾燥など環境の変化に見舞われダメージを受けるようになった時、原種の中から耐性のある品種を見つけることができていた。遺伝子組み換えとて同じだ。いくら組み換え技術があったとしても、元となる原種の遺伝子がなければ、機械はあるが原料がない工場みたいなもの。製品を作ることはできない。そのような貴重な原種の遺伝子を組み換え作物が汚染していく状況が進んでいる。例えばメキシコは何千ものトウモロコシの原種(遺伝子資源)があるところだが、輸入のGMトウモロコシによって汚染されてしまったことが示唆されている。最もひどく汚染された地域はオアハカで、そこではトウモロコシサンプルの4分の1にGM陽性と出たという。原種は人類共通の財産である。GM汚染によって多種多様な品種は永久に失われる。それは世界の食物保全を脅かすことなのだ。

 日本では穀物以外大方がF1種となり種子は毎年買うことが当たり前になっている。GMイネの試験栽培が行われ、輸入も認めた。日本もすぐそこまで危機が迫っている。

(食政策センター「ピジョン21」)

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